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お布施はいくら包む?葬儀・法事・戒名の相場と渡し方をお坊さんが解説

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お坊さん(僧侶歴10年以上)

数百件のご家族と向き合ってきた経験から、終活・葬儀・墓じまいの悩みにお応えします。

お布施はいくら包む?葬儀・法事・戒名の相場と渡し方をお坊さんが解説

「お布施って、いったいいくら包めばいいんでしょうか」——お葬式や法事のご相談で、もっとも多くいただくのがこのお問い合わせです。値段表があるわけでもなく、聞いていいのかも分からず、結局そのまま不安だけが残ってしまう。そんな声を本当によく耳にします。

結論からお伝えします。葬儀のお布施は全国平均でおよそ22.9万円、法事は一周忌で3〜5万円、戒名は信士・信女で10〜50万円が目安です。ただしこの金額は、あくまでも「相場という名の集計値」であって、お寺ごと・地域ごと・宗派ごとに大きく幅があります。

そもそもお布施は、読経や戒名授与への「お礼」ではなく、仏さまとお寺への寄進(喜捨)です。だから本来は値段がなく、それゆえに迷う方が後を絶ちません。

この記事は、曹洞宗住職としてお檀家さんと長くお付き合いしてきた目線から、お布施の本質・葬儀/法事/戒名の相場・地域差・封筒や渡し方のマナー・払えないときの相談のしかたまでを、ひと通りまとめました。

※ この記事は最後まで読まなくてかまいません。気になる章だけお読みください。

最終更新: 2026-05-17

お布施はいくら包む?まずは結論

50代の長女

お布施って、いくら包めばいいんでしょうか

お坊さん

葬儀・法事・戒名で目安が違います。順にお話しします

お布施に「定価」はありませんが、長年の慣習として、ある程度の目安は存在します。これを先にお伝えしておくと、その後のお話がぐっと整理しやすくなります。

葬儀のお布施は、全国平均でおよそ22.9万円(鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査・2024年」)。法事は四十九日や一周忌で3〜5万円、三回忌以降は段階的に少しずつ減らしていく家庭が多くなっています。戒名は位号によって幅があり、信士・信女で10〜50万円、居士・大姉で50〜80万円、院号で80万円以上が目安と言われます。

お布施の結論早見表。3層構成:上段「葬儀のお布施 全国平均およそ22.9万円・家族葬や一日葬で幅あり」、中段「法事のお布施 四十九日と一周忌で3〜5万円、三回忌以降は1〜5万円」、下段「戒名料 信士信女10〜50万円・居士大姉50〜80万円・院号80万円以上」。出典として鎌倉新書2024、コープ家族葬2024、e-sogiの3つを脚注に明示
お布施の「葬儀・法事・戒名」結論早見表(金額は目安。地域・宗派・関係性で幅があります)

結論早見表(葬儀・法事・戒名)

ひと目で確認したい方のために、3つの場面の目安をまとめます。

  • 葬儀のお布施:全国平均およそ22.9万円/一般葬・家族葬は15〜50万円帯/一日葬は10〜30万円帯/直葬は3〜10万円帯
  • 法事のお布施:四十九日3〜5万円/一周忌3〜5万円/三回忌1〜5万円/七回忌以降は1〜3万円
  • 戒名料:信士・信女10〜50万円/居士・大姉50〜80万円/院号80万円以上

この目安を頭に入れておけば、まず大きく外れることはありません。ただし、ここから先は地域差・宗派差・お寺との関係性で動きます。それぞれの章で順に見ていきます。

お布施についての3つの誤解

お布施を考えるとき、最初に解いておきたい誤解が3つあります。

1つ目は「お布施は読経や戒名授与へのお礼(対価)」という誤解です。お布施は本来、仏法僧の三宝への寄進であって、サービスへの対価ではありません。読経や戒名は寄進にお応えしてお勤めするもので、順序が逆になります。

2つ目は「お布施には値段がある」という誤解です。値段がないからこそ、私たちは「相場」という言葉に頼ります。けれども相場は、あくまでも全国の集計から見える平均値や中央値にすぎません。各家庭の事情で増減して当然のものです。

3つ目は「戒名料はお布施とは別」という誤解です。地域や寺院によっては、お布施と戒名料を一括で包む慣習があれば、別々に包む慣習もあります。どちらが正しいというものではなく、地域慣習に従うものです。

お布施についての3つの誤解を3カラムでバツアイコン付きに整理した図解。左カラム「対価ではない・読経や戒名へのお礼ではなく寄進」、中カラム「値段ではない・全国平均はあくまで集計値」、右カラム「戒名代と分けない地域もある・一括か別包みかは慣習」の3項目を明示
お布施についての3つの誤解。最初にここを整理すると相場の話がすっと入ります

この記事の読み方

本記事は長尺ですが、全部読む必要はありません。今いちばん気になる章だけお読みください。

  • 葬儀の相場だけ知りたい方は H2-3「葬儀のお布施相場」
  • 法事の相場だけ知りたい方は H2-4「法事のお布施相場」
  • 戒名のことなら H2-5「戒名料の相場」(詳細は別記事に委ねます)
  • マナーが気になる方は H2-9「封筒・表書き・お札・渡し方のマナー」
  • 経済的に厳しい方は H2-10「お布施が高い/払えないときの相談のしかた」

それぞれの章末に関連記事へのリンクを置いていますので、必要に応じてあわせてお読みください。

そもそもお布施とは何か(仏教の寄進思想)

50代の長女

読経料ではないって本当ですか

お坊さん

お礼ではなく、仏さまへの寄進です

ここで少しだけ、お布施という言葉の本来の意味をお話しさせてください。「相場」を判断する目安が、ぐっとしっかりしてきます

お布施は仏教の修行のひとつで、サンスクリット語のダーナ(dāna)を語源とします。意味は「与えること」「分かち合うこと」です。お金や品物だけでなく、教えを伝えること、人を安心させることまでを含む、広い概念です。

つまりお布施は、お寺や僧侶への支払いではなく、ご自身が仏さまと向き合うための行いそのものなのです。それを受け取る側のお寺は、いただいた寄進をもとに、本堂を維持し、行事を営み、地域の宗教活動を続けていきます。

お布施は「お礼」ではなく「寄進」

世間でしばしば「読経料・戒名料」という言葉が使われますが、これは本来の仏教用語ではなく、近代に入ってからの便宜的な呼び方です。全日本仏教会も「お布施はサービスの対価ではなく、慈しみの心に基づく寄進である」と公式に説明しています。

これは綺麗事に聞こえるかもしれません。けれども、この理解があるかないかで、相場の受け止め方がずいぶん変わります。「読経の対価で20万円は高い」と感じるか、「仏さまへの寄進として20万円を捧げる」と受け止めるか。同じ金額でも、心の置きどころが違ってきます。

財施・法施・無畏施の三施

お布施には伝統的に3つの種類があると教えられてきました。

1つ目は財施(ざいせ)。お金や品物を差し出すお布施です。私たちが「お布施」と聞いて思い浮かべるのは、ほとんどがこの財施です。

2つ目は法施(ほうせ)。仏さまの教えを人に伝えるお布施です。僧侶がお檀家さんに法話をするのも、これにあたります。

3つ目は無畏施(むいせ)。相手の不安を取り除き、安心を与えるお布施です。やさしい言葉をかけること、穏やかな表情で接することも、立派なお布施だと教えられます。

三施(財施・法施・無畏施)の関係図。中央に布施と書かれた円があり、そこから放射状に3要素が伸びる構造。財施=お金・品物を差し出す、法施=教えを伝える、無畏施=不安を取り除き安心を与える、の3つを各アイコンと一行説明で並べた図解
お布施の3つのかたち。財施・法施・無畏施をあわせて「三施」と呼びます

つまり、お布施として差し出されているお金は、三施のなかの財施というかたちに過ぎません。財施だけが大切なのではなく、人を思いやる無畏施もまた、同じく尊いお布施なのです。

なぜ「相場」という言葉に違和感が残るのか

お寺の住職としてお話しすると、「相場」という言葉を私たちは正面から使いにくいのが正直なところです。値段ではないものに「相場」を当てはめてしまうと、お布施が知らないうちに対価扱いされてしまうからです。

ただ、相場という言葉なしには、初めての方が「いくら包めばいいか」を考える手がかりがありません。だから本記事でも便宜上「相場」「目安」という言葉を使います。ただし「相場=言い値」ではないこと、各家庭の事情で自由に決めて差し支えないことだけは、頭の片隅に置いていただければと思います。

法律上の位置づけ(非課税の宗教活動)

ついでに、税法上の扱いも少し触れておきます。国税庁は、お布施・戒名料・玉串料などについて「葬儀や法要に伴う宗教活動による現金収入で、本来の宗教活動であれば非課税」と明示しています。

つまり、お布施はサービスの売上ではなく、宗教法人としての宗教活動に位置づけられているのです。だから領収書も、発行する寺院もあれば発行しない寺院もある、というふうに対応が分かれます。

葬儀のお布施相場

50代の長女

葬儀のお布施は、平均でいくらくらいですか

お坊さん

全国平均はおよそ22.9万円。葬儀の形式で幅が出ます

ここからは具体的な金額の話に入ります。まずは葬儀のお布施から見ていきましょう。

葬儀のお布施は、鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」によると、お寺への支払い全体の全国平均がおよそ22.9万円。葬儀費用全体の平均が118.5万円ですから、そのうちの2割弱がお布施という構成になります。

ただしこの平均値は、一般葬・家族葬・一日葬・直葬のすべての形式を合算した数字です。形式ごとに見ると、当然ながら幅があります。

葬儀全体のお布施 全国平均(約22.9万円)

22.9万円というのは、あくまでも全国平均です。都道府県や地域で大きく上下します。詳しくは後の「地域差」の章でお話ししますが、最も高い山梨県は約48.9万円、低い地域では10万円台前半までと、地域ごとに30万円以上の差が出ることも珍しくありません。

また、菩提寺(先祖代々のお付き合いがあるお寺)にお願いする場合と、葬儀社が紹介してくださる僧侶にお願いする場合でも、金額の幅が違ってきます。これも後で詳しく見ていきます。

形式別の目安(一般葬・家族葬・一日葬・直葬)

葬儀の形式ごとに、お布施の目安をざっとまとめると次のようになります。

  • 一般葬:通夜+告別式+初七日繰上げで20〜50万円帯(読経3回前後)
  • 家族葬:通夜+告別式+初七日繰上げで15〜40万円帯(一般葬と読経内容は同等)
  • 一日葬:通夜を省き告別式のみで10〜30万円帯(読経2回程度)
  • 直葬・火葬式:炉前読経のみで3〜10万円帯(読経1回)
葬儀形式別のお布施相場を4本の横棒グラフで表現した図解。横軸は金額、4形式の名称と金額レンジを並列表示。一般葬20〜50万円、家族葬15〜40万円、一日葬10〜30万円、直葬3〜10万円。読経回数も併記(一般葬3回・家族葬3回・一日葬2回・直葬1回)
葬儀の形式別お布施相場の目安。読経の回数(通夜・告別式・初七日)が金額に直結します

家族葬と一般葬で読経の中身が同じであれば、参列者の人数が少ないからといってお布施を下げる慣習はありません。読経の回数と内容が同じなら、目安はほぼ同じです。一日葬や直葬で目安が下がるのは、読経の回数が減るためです。

通夜+告別式+初七日繰上げの内訳

一般葬や家族葬で20〜50万円という幅は、3回の読経分として理解すると整理しやすくなります。

  • 通夜の読経:5〜15万円
  • 告別式の読経:10〜25万円
  • 初七日繰上げ法要の読経:5〜10万円

これを合計すると20〜50万円帯になります。ただし、寺院によっては「全部まとめてお布施はおいくら」と一括で目安を伝えてくださるところもあります。地域や寺院ごとに集計のしかたが違うので、こだわりすぎず、菩提寺の慣習にあわせるのが安心です。

菩提寺と葬儀社紹介僧侶でなぜ金額が違うのか

葬儀社が紹介してくださる僧侶にお願いする場合、「お布施は◯万円」と定額表示されていることが多くあります。読経1回あたり5万円、戒名込みで15万円、というような価格表示です。

これは葬儀社が、施主の不安を取り除くために「料金が分かりやすい状態」にしてくださっているからで、決して悪いことではありません。一方で、菩提寺にお願いする場合は「お志で結構です」と伝えられることがほとんどで、目安がない分、施主が迷うことになります。

40代の長男

菩提寺のほうが高いとも限らないんですね

なぜこの差が生まれるかというと、菩提寺は「先祖代々の関係性のなかでお勤めする」立場であり、葬儀社紹介の僧侶は「一回限りの依頼にお応えする」立場だから、というのが大きな理由です。前者は関係が続く前提で、後者は完結する前提。それぞれの立場で、お布施のかたちが少し違ってくるのです。

「菩提寺のほうが必ず高い」「葬儀社紹介のほうが必ず安い」ということではありません。関係性の深さと、目安が明示されているかどうかの差だと考えていただくと、理解しやすいかと思います。

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法事のお布施相場

50代の長女

一周忌はいくら包めばいいでしょうか

お坊さん

3〜5万円が一般的な目安です

葬儀のあと、ご家庭は四十九日・一周忌・三回忌・七回忌〜五十回忌と続く長い法事の旅に入ります。それぞれの法事ごとに、ある程度の目安が存在します。

法事のお布施は、葬儀のお布施に比べると金額の幅が狭く、相場が安定しています。これは法事が「年忌ごとに繰り返し営まれる」性質のもので、各家庭が無理なく続けられる金額に収まってきたから、と言えるかもしれません。

四十九日法要(3〜5万円)

四十九日は、亡くなった日から49日目に営む大切な法要です。納骨を同日にされる家庭も多く、忌明けの節目として位置づけられています。

お布施の目安は3〜5万円(コープの家族葬2024年データ)。納骨も同日に行う場合は、別途1〜5万円の納骨お布施を包む慣習があります。お墓を新しく建立した場合や、お骨壷を初めて納める場合の開眼法要は、別途1〜3万円が目安です。

一周忌(3〜5万円)

亡くなって満1年目の命日(または前後の都合のよい日)に営む法事です。本来は親族・知人を招いて少し大きめに営むものとされてきましたが、近年は家族のみで小さく営むご家庭も増えています。

お布施の目安は四十九日と同じく3〜5万円。読経の内容も四十九日と大差ないため、目安は据え置きが慣習です。

三回忌以降(1〜5万円・段階的減)

三回忌は、亡くなって満2年目(数え3年目)に営む法事です。ここから少しずつ、目安が下がっていく家庭が多くなります。

  • 三回忌:1〜5万円
  • 七回忌:1〜3万円
  • 十三回忌・十七回忌・二十三回忌:1〜3万円
  • 三十三回忌・五十回忌:1〜3万円
年忌法要のお布施金額減衰パターンを階段グラフで表現した図解。横軸は法要の種類(四十九日→一周忌→三回忌→七回忌→十三回忌→三十三回忌→五十回忌)、縦軸は金額レンジ(万円単位)。三回忌以降は徐々に下がり、七回忌からは1〜3万円帯で据え置く家庭が多いことを示す。出典:コープ家族葬2024、よりそうお葬式2025
年忌法要のお布施 減衰パターン。三回忌以降は段階的に小さくなり、七回忌から据え置く家庭が多くなります

なぜ三回忌以降は据え置きが多いのかというと、「故人を偲ぶ気持ちは変わらないけれど、家族や親族の生活も続いていく」からです。法事は数十年にわたって続くものですから、無理のない金額で続けていくことが、何より大切なのです。

納骨・開眼・お盆・お彼岸の独立相場

年忌法要のほかにも、お布施をお渡しする場面はいくつかあります。それぞれ目安をまとめておきます。

  • 納骨法要:1〜5万円(年忌法要と同日なら不要、別日なら独立して包む)
  • 開眼法要(お墓・お仏壇・お位牌の入魂):1〜3万円
  • 閉眼法要(お墓じまい・お仏壇じまい):1〜3万円
  • お盆の棚経:3千〜1万円(お寺によって異なる)
  • お彼岸の供養:3千〜1万円
  • 初盆・新盆:3〜5万円(通常のお盆より少し厚めに)

これらは年忌法要とは別軸の相場です。お盆の棚経は、地域によっては「お寺がお盆期間中に各家庭を回ってくださる」慣習があり、その場合は3千〜5千円の少額で済む家庭もあります。地域慣習に従ってください。

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戒名料の相場(位号別)

50代の長女

戒名料は別に必要なんですか

お坊さん

位号によって幅が大きく出ます

戒名は、亡くなった方が仏門に入り、仏弟子として新しい名前をいただくものです。位号によってお布施の目安が大きく変わるため、別記事で詳しく扱っていますが、ここでは相場のレンジだけ確認しておきましょう。

戒名料の位号別レンジ(信士・信女〜院号)

位号ごとの目安は次の通りです(鎌倉新書「いい葬儀」e-sogiの公表データより)。

  • 信士・信女(しんじ・しんにょ):10〜50万円
  • 居士・大姉(こじ・だいし):50〜80万円
  • 院号(いんごう):80万円以上
  • 院殿号(いんでんごう):100万円以上が一般的

ただし、この目安は宗派・寺院・地域によって大きく変動します。同じ「信士」でも、ある寺院では10万円、別の寺院では30万円ということが普通にあります。

位号別戒名料レンジ表。3段構成の縦表:信士・信女10〜50万円、居士・大姉50〜80万円、院号80万円以上。各位号の意味も併記(信士=在家の仏弟子、居士=仏教への信仰が深い、院号=寺院に貢献した方)。曹洞宗住職の備考として「位号の高低は人格の上下ではない」と明示
位号別の戒名料目安。「高い戒名=故人を立派にする」ではありません

「お布施に戒名料は含まれるのか」問題

地域や寺院によって、扱いが2つに分かれます。

  • 一括包む地域:葬儀のお布施と戒名料をまとめて「お布施」として包む
  • 別包みにする地域:葬儀のお布施と戒名料を別々の封筒に分けて包む

どちらが正しいということはなく、菩提寺や地域の慣習に従うのが基本です。葬儀社が紹介してくださる僧侶の場合は、葬儀社のスタッフが教えてくださることがほとんどです。迷ったら直接お寺に確認してください。それが一番確実です。

戒名は「位の高さ」を競うものではありません

これは曹洞宗住職としてお伝えしたいことなのですが、「高い戒名をいただいた=故人を立派にできた」という理解は、本来の戒名のあり方からは少し離れています。

戒名は、亡くなった方が仏弟子として新たに歩み始めるための名前であって、ランクや格付けではありません。院号がついていなくても、信士・信女のままで、十分に仏弟子としての名前なのです。

ご家族の信仰・故人の生前のお寺との関わり・経済的なご事情を踏まえて、無理のない範囲で選ばれることが大切です。戒名の意味や宗派ごとの違いは、別記事で詳しく解説しています。

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地域差 — 山梨が突出して高く、西日本は穏やかな傾向

50代の長女

地域でずいぶん違うと聞きました

お坊さん

鎌倉新書の調査で30万円以上の差があります

お布施は、地域によって大きく違います。同じ仏教・同じ宗派でも、地域ごとに集計値が30万円以上違うことが珍しくありません。

具体的な数字を見ていきましょう。鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」が、47都道府県ごとのお布施の平均値を公表しています。

高めの上位5県

最新の調査で、お布施の平均が高めの上位5県は次のようになっています。

  • 山梨県:約48.9万円(突出して高い)
  • 宮城県:約35.4万円
  • 徳島県:約31.8万円
  • 栃木県:約31.7万円
  • 群馬県:約31.5万円

山梨県が抜きん出て高く、東北の宮城・四国の徳島・北関東の栃木と群馬が続きます。東日本の一部地域に高めの傾向が見られますが、東日本がすべて高いというわけではありません。

低めの下位5県

一方、お布施の平均が低めの下位5県は次のようになっています。

  • 沖縄県:約10.4万円(全国で最も低い)
  • 香川県:約13.2万円
  • 高知県:約13.2万円
  • 新潟県:約13.2万円
  • 鹿児島県:約13.5万円

沖縄が突出して低く、四国の香川・高知、九州の鹿児島、北陸の新潟と、地域はまちまちです。

「関西が高い」は事実とは限らない

40代の長男

関西は高めだと聞いていましたが

お坊さん

鎌倉新書のデータでは関西は低めです

世間でしばしば「関西は葬儀が厳格でお布施も高い」と言われますが、2024年の鎌倉新書のデータを見るとむしろ関西は低めの地域に含まれます。大阪16.1万円・兵庫20.6万円・京都23万円・奈良17万円・和歌山17.7万円と、いずれも全国平均(22.9万円)を下回るか、同程度です。

地域の言い伝えと、実際の集計データにはずれがあることもあります。ご自身の地域の相場が気になる場合は、古い言い伝えに頼らず、地元の葬儀社か菩提寺に直接尋ねるのが一番確実です。

全国お布施地域差マップ。日本地図を5色で塗り分けた図解。山梨県が最も濃い色(突出して高い・48.9万円)、宮城・徳島・栃木・群馬が次に濃い色(30万円台)、関西圏や四国・九州の一部が薄い色(10万円台)。各地域に金額レンジの目安を併記。出典:鎌倉新書 第6回お葬式に関する全国調査2024年
お布施の全国地域差マップ。山梨が突出して高く、関西・四国・九州の一部が低めという分布です

地域差が生まれる背景

なぜこういう地域差が生まれるのでしょうか。一つの要因に絞れる話ではありませんが、考えられる背景をいくつか挙げてみます。

1つ目は各地域の葬儀の規模・形式です。直葬や一日葬が広く普及している地域では、読経の回数が減るぶん、お布施の目安も低めに落ち着きます。

2つ目は檀家制度の濃淡です。先祖代々のお寺との関係が今も色濃く残っている地域では、お寺への寄進文化が伝統的に厚めになる傾向があります。

3つ目は都市化のスピードです。人の入れ替わりが激しい都市部では、お寺との関係が現代的・実利的になりやすく、相場も穏やかに収まることがあります。

ただし、これらはあくまでも一般的な傾向で、「この県だからこの金額」と決まっているわけではありません。同じ県内でも市区町村ごと・寺院ごとに大きく差が出ます。

宗派による違い(曹洞宗・浄土真宗・他宗派)

50代の長女

うちの宗派ではどうなんでしょう

お坊さん

宗派ごとに運用が違います。順にお話しします

お布施の目安は、宗派によっても運用が違います。これも教義に基づく違いであって、どの宗派が「高い/安い」という優劣の問題ではありません。

ここでは主要な宗派の運用を、曹洞宗住職としての一次理解と、各宗派公式の公表情報を組み合わせて整理します。

曹洞宗の運用(寄進主体・志納)

曹洞宗は、お布施を「志納」(しのう)として受けるのが伝統です。寺院から金額を提示することは原則せず、施主のお志に任せます。これは禅宗の托鉢の伝統と深く結びついており、与える側と受ける側の「対等な布施行」として位置づけられています。

そのぶん、施主は「いくら包めばいいのか」を自分で判断することになります。困ったときは菩提寺の住職に「他の檀家さんはどのくらい包まれていますか」と伺うのが一番確実です。多くの住職は、無理のない目安をやさしく教えてくださいます。

浄土真宗の運用(門徒志納の柔軟性)

浄土真宗は、教義上「忌明け」「霊」「成仏」といった概念を他宗派と異なる扱いをします。亡くなった方は「即得往生」(そくとくおうじょう)といって、ただちに浄土に往生されるという考え方です。

そのため、お布施の扱いも他宗派より柔軟で、門徒志納(もんとしのう)として、各門徒(檀家)の力量に応じてご志納いただく姿勢が強くあります。戒名にあたる「法名」も、生前のお寺との関わりのなかで授かるもので、葬儀でつけるものではありません。

そのため、葬儀時に「戒名料」という概念がなく、純粋なお布施として一括お包みするのが一般的です。

真言宗・天台宗・日蓮宗・浄土宗の概況

これらの宗派でも、基本的な相場は全国の集計値とほぼ重なります。各宗派ごとの細かな違いは、以下のような傾向があります。

  • 真言宗:護摩供養や加持祈祷の場面が多く、それぞれにお布施が独立する慣習
  • 天台宗:法要のかたちが比較的格式高めで、目安は全国平均よりやや高め
  • 日蓮宗:お題目「南無妙法蓮華経」を中心にした法要、目安は全国平均並み
  • 浄土宗:戒名料は宗派内でも幅広く、菩提寺との相談が大切
宗派別お布施運用比較表。4列の表で4宗派群を比較:曹洞宗(志納・対等な布施行)/浄土真宗(門徒志納・即得往生で戒名料の概念なし)/真言宗(護摩・加持祈祷それぞれに独立)/天台宗・日蓮宗・浄土宗(全国平均並み〜やや高め)。各列に教義との関連性も併記
主要宗派のお布施運用比較。教義に基づく違いであって、優劣ではありません

自分の宗派がわからないとき

ご両親が亡くなった後で、はじめて「うちの宗派は何だったか」と気づかれる方は、実は少なくありません。確認の方法はいくつかあります。

1つ目はお仏壇のご本尊・お位牌を見ることです。お位牌に書かれた戒名の文字(「○○居士」「○○禅定門」など)から、宗派が推測できる場合があります。

2つ目は菩提寺の所在を、ご親族や年長者に伺うことです。「○○寺さんだったよ」と聞ければ、そのお寺の宗派を電話帳や検索で確認できます。

3つ目は地域の葬儀社に相談することです。葬儀社のスタッフは、その地域の主要なお寺を熟知していますし、「ご親族の年代と地域からすると、おそらく○○宗です」と推測してくださることもあります。

お布施以外に必要な「御車料」「御膳料」「お心づけ」

50代の長女

御車料って必ず要りますか

お坊さん

お寺によっては不要な場合もあります

お布施そのものとは別に、葬儀や法事の場面では「御車料」「御膳料」「お心づけ」という別軸のお金がたびたび話題に上ります。これらはお布施と性格が違うものですので、整理しておきます。

御車料(5千〜1万円・自宅から会場までの距離)

御車料(おくるまだい)は、僧侶が自宅や会場まで足を運んでくださることに対して、お礼として包むものです。タクシー代の実費的な性格があります。

目安は5千〜1万円。遠方からお越しいただく場合や、お寺が会場までかなり離れている場合は、もう少し厚めに包む家庭もあります。逆に、菩提寺がすぐ近所で、僧侶が徒歩や自転車で来られる場合は不要と言ってくださるお寺も少なくありません。

迷ったときは、菩提寺に「御車料はどうされていますか」と素直に伺ってください。「うちはいいですよ」と言われる場合もあれば、「気持ちだけお願いします」と言われる場合もあります。

御膳料(5千〜1万円・お斎を辞退した場合)

御膳料(おぜんりょう)は、葬儀や法事の後に行う会食(お斎・おとき)を、僧侶が辞退された場合に、その分を金銭でお渡しするものです。

近年は、会食を省略して仕出し弁当のお持ち帰りに切り替えるご家庭や、コロナ禍以降に会食そのものを行わないご家庭が増えました。その場合も、御膳料として5千〜1万円をお渡しするのが慣習です。

会食をしっかり用意してお参加いただける場合は、御膳料は不要です。

お心づけ(葬儀社スタッフへ・近年は不要が主流)

お心づけは、葬儀社のスタッフや火葬場の職員などに、感謝の気持ちとしてお渡しする少額の金銭です。

ただし近年は「不要が主流」になっています。多くの葬儀社が「料金に含まれていますのでお気遣いなく」と明示するようになり、火葬場でも公的施設では受け取りを断ることが一般的です。

お布施・御車料・御膳料・心づけの4種比較表の図解。横軸4列:お布施/御車料/御膳料/お心づけ。縦軸4行:金額目安・対象・必須性・渡すタイミング。お布施は寄進で必須、御車料5千〜1万円で寺院との距離次第、御膳料5千〜1万円で会食辞退時、お心づけ近年不要が主流の4種の違いをひと目で整理
お布施周辺の4種のお金。性格と必須性をひと目で整理しました

封筒・表書き・お札・渡し方のマナー

40代の次女

薄墨で書くんでしたっけ

お坊さん

お布施は濃墨で書いてください

ここからは、お布施の実務的なマナーに入ります。「いざ包もう」というときに、封筒の種類や表書きで迷う方が本当に多くいらっしゃいます。ひととおりまとめておきます。

封筒の選び方(白封筒・奉書紙・水引)

お布施を包む封筒は、次のいずれかが一般的です。

  • 白無地の封筒(郵便番号枠のない、シンプルな白い封筒)
  • 奉書紙(ほうしょし、ややかしこまった場で使う厚手の和紙)
  • 水引なしのお布施用封筒(市販の専用封筒、「御布施」と印刷済み)

ポイントは「水引は不要」という点です。香典は不祝儀袋に水引(黒白か双銀)をつけますが、お布施に水引はつけないのが本来の作法です。お布施は不祝儀ではなく、寺院への寄進だからです。

ただし、最近は水引付きの「御布施袋」も市販されています。これを使うこと自体が間違いというわけではなく、地域や寺院の慣習によります。迷ったら水引なしの白封筒を選んでおけば、まず外れません。

表書き(御布施・お布施・志)と裏面の書き方

封筒の表面には、中央に縦書きで「御布施」または「お布施」と書きます。地域によっては「志」「御経料」と書く慣習もありますが、迷ったら「御布施」が無難です。

その下には、施主の氏名(または「○○家」)を書きます。

裏面には、左下に住所と金額を縦書きで書きます。金額は旧字体(壱・弐・参・五・拾・万・円)で書くのが正式とされてきました。

  • 5万円 → 金 伍萬圓
  • 10万円 → 金 壱拾萬圓
  • 20万円 → 金 弐拾萬圓

ただし、最近は普通の漢数字(5・10・20)でも問題ないとする寺院が多くなっています。迷ったら旧字体、簡略で問題なければ普通の漢数字、どちらでも失礼にあたりません。

お布施封筒の書き方サンプル図解。封筒表面と裏面を並列に配置。表面:中央に縦書きで「御布施」、その下に「○○家」または施主氏名。裏面:左下に住所と金額(縦書き)、金額例「金 伍萬圓」と「金 五万円」を併記。水引なしの白無地封筒の図を中央に配置
お布施封筒の書き方サンプル。表書きは「御布施」、金額は旧字体でも普通の漢数字でも

お札の向き(新札 or 折り目入り)

お札の入れ方も、慶事と弔事で考え方が違いますが、お布施は寄進であって弔事の不祝儀ではないので、あまり厳格に考える必要はありません

  • 新札を使う:あらかじめ準備されていた印象を与えるため、本来は弔事では避ける慣習。ただしお布施は寄進なので、新札でも構いません
  • 折り目を入れる:弔事のしきたりに合わせる場合。気になる方は、新札を一度軽く折って使うとよいでしょう
  • お札の向き:肖像が封筒の表側を向くように、上向きに揃えて入れます

迷ったら、肖像を表向きにそろえた折り目入りのお札、と覚えておけばまず問題ありません。

渡すタイミング(葬儀前 or 後・切手盆/袱紗)

お布施をお渡しするタイミングは、地域や寺院の慣習によって少し違います。代表的なものをまとめます。

  • 葬儀の前:僧侶が控室に入られた直後に、ご挨拶とともにお渡しする(関東圏でやや多い)
  • 葬儀の後:すべての法要が終わった後、控室か玄関先でお渡しする(関西圏でやや多い)
  • 会食の終わり:法事の場合、会食終了後にお渡しする

いずれの場合も、お布施を直接手渡しするのではなく、切手盆(きってぼん)と呼ばれる小さなお盆に乗せて、または袱紗(ふくさ)に包んで差し出すのが丁寧な作法です。切手盆がない場合は、袱紗を畳んだ上にお布施を乗せて、両手で差し出してください。

お布施の渡し方フロー図解。横並び3パターン:葬儀の前(控室で挨拶とともに)/葬儀の後(法要終了後、控室か玄関先で)/会食の終わり(法事の場合、会食終了後)。各パターン下に「切手盆に乗せる」または「袱紗に包む」のアイコンを配置。袱紗の畳み方の手順も小さな図で併記
お布施を渡すタイミングと所作。切手盆か袱紗を使い、両手で差し出してください

お布施が高い/払えないときの相談のしかた

50代の長女

正直なところ、用意するのが厳しくて

お坊さん

まずは菩提寺に正直に相談してください

ここからは、本記事のなかで住職として一番お伝えしたい章です。お布施の話は、お金の話だからこそ、なかなか正直に相談できない方が多くいらっしゃいます。

ですが、お布施が用意できないからといって、葬儀や法事を諦める必要はありません。相談していい選択肢は、思っているよりずっとたくさんあります

まず菩提寺に正直に相談していい

お布施が用意できないとき、最初にしていただきたいことは「菩提寺に正直に伝える」ことです。これは決して恥ずかしいことではありません。

多くの住職は、檀家の家計の事情を踏まえて、無理のない範囲でお勤めをお受けしてくださいます。「相場の半分しか用意できない」「分割でお願いできないか」「今は包めないが、来年改めて」——どれも、菩提寺との関係のなかでは、ごく自然な相談です。

逆に、相談せずに「足りないお布施」を渡してしまうほうが、後々ぎくしゃくする原因になりがちです。住職側からすると、「事情を伺っていれば、こちらももっとお応えできたのに」と感じる場面が、実は少なくないのです。

分割・後払いの相談例

具体的な相談のしかたを、いくつか例示しておきます。お寺によって受け方は違いますが、まずは相談していただくこと自体が大切です。

  • 「葬儀のお布施を、3回に分けてお納めさせていただけませんか」
  • 「四十九日のお布施を、納骨のときにまとめてお願いできませんか」
  • 「今は手持ちが厳しいので、相場よりも控えめなお布施で失礼させていただきます」
  • 「年内にもう一度、改めてお参りさせていただきたいので、その際にお礼を改めて」

このような相談に応じてくださる寺院も多くあります。ただし、これは「必ず認められる」ものではなく、菩提寺の判断であることはご理解ください。それでも、相談しないより相談したほうが、選択肢は確実に増えます。

葬儀社紹介僧侶の場合の交渉余地

菩提寺がなく、葬儀社が紹介してくださる僧侶にお願いする場合は、葬儀社が定めた料金表に従うのが基本です。この場合は「もう少し控えめなプランはありませんか」と、葬儀社の担当者に相談する形になります。

  • 直葬・火葬式に切り替えれば、お布施全体を10万円台に抑えられる場合があります
  • 戒名なしの選択肢を提示してくださる葬儀社もあります
  • 一日葬への切り替えで、通夜の読経分のお布施を省略できる場合があります

ただし、戒名や読経を簡略化することについては、後で「やはり戒名は授かっておくべきだった」と後悔されるご家庭も少なくありません。目先の金額だけで判断せず、ご家族でよく話し合ってください。

公的支援(葬祭費・生活保護葬祭扶助)との関係

「お布施が払えない」というご相談に対して、もうひとつご案内しておきたいのが公的支援制度です。これらはお布施そのものを補助するものではありませんが、葬儀全体の費用負担を軽くしてくれます。

1つ目は葬祭費です。国民健康保険・後期高齢者医療制度の加入者が亡くなった場合、喪主に対して1〜7万円(自治体により異なる)が支給されます。窓口は市区町村の国保年金課です。健康保険組合の場合は埋葬料・埋葬費として5万円が支給されます。

2つ目は生活保護葬祭扶助です。生活保護受給者または、その方の葬儀費用を出せない遺族の場合、福祉事務所が直接葬儀社に費用を支払う制度があります。読経や戒名は含まれませんが、火葬と最低限の葬儀が公費でまかなわれます。

お布施が高い/払えないときの相談フロー図解。5ステップ縦並びフロー。ステップ1:菩提寺に正直に相談(分割・後払い・控えめなお布施の相談)/ステップ2:葬儀社紹介僧侶の場合は葬儀社へ控えめプラン相談/ステップ3:葬儀形式の見直し(一日葬・直葬へ切り替え)/ステップ4:公的支援の活用(葬祭費・生活保護葬祭扶助)/ステップ5:福祉事務所・市区町村窓口へ相談
お布施・葬儀費用が厳しいときの5段階相談フロー。一つずつ可能性を試していけます

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お寺との長い関係性のなかで考えるお布施

40代の長男

お布施って毎年続くんですか

お坊さん

関係性の中の一行為とお考えください

最後の章として、お布施を「お寺との数十年の関係性」のなかで位置づける視点をお話しさせてください。お布施は、葬儀や法事という一回きりの場面で完結するものではないのです。

法要・お盆・お彼岸・年回忌の長期関係

亡き方をご縁としてはじまったお寺との関係は、その後長く続いていきます

  • 四十九日法要(亡くなって49日目)
  • 百ヶ日法要(100日目、最近は省略する家庭も多い)
  • 一周忌(満1年目)
  • 三回忌・七回忌・十三回忌・十七回忌・二十三回忌・三十三回忌・五十回忌
  • 毎年のお盆・お彼岸の供養
  • 月命日のお参り(毎月される家庭もあれば、年に数回の家庭もあります)
一生のお寺との関わり年表。横軸タイムライン形式の図解。左端「ご逝去」から始まり、四十九日→一周忌→三回忌→七回忌→十三回忌→三十三回忌→五十回忌までを並べ、各節目のお布施目安を上部に小さく併記。下部にお盆・お彼岸の毎年の供養もある旨を明示。50年に及ぶ長い関係性を視覚化
ご逝去から五十回忌まで、お寺との関わりは数十年に及びます。お布施はその中の一行為です

これだけ長く続く関係性のなかで、お布施を「一回いくら」で考えると、どうしても重荷に感じてしまいます。けれども、「数十年続く関わりのなかでの一行為」と捉え直すと、見え方が変わってきます。

お布施は「関係性の維持費」ではない

ただ、誤解していただきたくないのは、お布施は「関係性を維持するための会費」ではないということです。

「年会費」のような形でお寺との関係を考えてしまうと、お布施が義務的な負担に感じられ、信仰心とお布施の関係が痩せ細ってしまいます。お布施はあくまでも個々の場面での寄進であって、お寺との関係を維持するための対価ではありません。

お寺との関係は、お布施の有無や金額ではなく、「亡き方をご縁とした祈りの場を、共有し続けるかどうか」で続いていきます。経済的に厳しい時期は、お参りだけして、お布施は次の機会に、ということも自然にあっていいのです。

菩提寺がない方のお布施の考え方

最近は、菩提寺がない方も増えてきました。先祖代々のお寺との関係が、引越しや世代交代のなかで途切れてしまったご家庭も多くあります。

菩提寺がない場合、葬儀のお布施は葬儀社が紹介してくださる僧侶にお渡しする形になります。この場合は明示された料金に従えばよく、悩む余地は少なくなります。

法事の段階で「やはり菩提寺がほしい」と感じられた場合は、近くの同じ宗派のお寺に新しくお願いするという選択肢もあります。新しいお寺との関係の始め方は、お盆や彼岸の合同法要に一度参加してみる、住職にご挨拶に伺ってみる、というところから始められます。

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よくある質問

よくあるご質問

Q お布施は何のお金ですか?
A

お布施は、読経や戒名授与へのお礼(対価)ではなく、仏さま・お寺への寄進です。 サンスクリット語のダーナ(与える・分かち合う)を語源とする仏教の修行のひとつで、財施・法施・無畏施の3種類があると教えられます。 私たちが「お布施」と呼ぶお金は、このうちの財施にあたります。

Q お布施の全国平均はいくらですか?
A

葬儀のお布施は全国平均でおよそ22.9万円(鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査」2024年)。 これは一般葬・家族葬・一日葬・直葬を含めた全形式の集計値で、形式や地域、宗派によって大きく上下します。 都道府県別では山梨県が約48.9万円、宮城県が約35.4万円と全国平均より大きく上回り、沖縄県10.4万円、香川県・高知県・新潟県13.2万円のように低めの地域もあります。

Q お布施は領収書をもらえますか?
A

寺院によって対応が分かれます。 発行する寺院もあれば、宗教活動の性質上、発行しない寺院もあります。 お布施は税法上「宗教活動による現金収入」として非課税扱いになる(国税庁タックスアンサー)ため、領収書発行の義務はありません。 必要な場合は、お渡しの際に丁寧に依頼してください。

Q 家族葬と一般葬でお布施の額は変わりますか?
A

お布施自体は読経の内容に応じて決まるため、家族葬でも一般葬でも読経の回数(通夜・告別式・初七日繰上げ)が同じであれば、目安はほぼ同等です。 参列者の人数が少ないからといってお布施を下げる慣習はありません。 家族葬の費用が低いのは、主に飲食接待費・返礼品費の削減によるものです。

Q 直葬(火葬式)のお布施はいくらですか?
A

炉前読経のみであれば3〜10万円帯が目安です。 読経の回数が1回に絞られるため、通常の葬儀よりお布施は控えめになります。 ただし菩提寺がある場合は、直葬を選ぶ前に必ず菩提寺に事前相談してください。 納骨を断られる場合があり、後々のトラブルになることがあります。 詳しくは「直葬(火葬式)とは」記事をご参照ください。

Q 四十九日法要のお布施はいくらですか?
A

3〜5万円が一般的な目安です。 納骨を同日に行う場合は、別途1〜5万円の納骨お布施を包む慣習があります。 お墓を新しく建立した場合や、お骨壷を初めて納める場合の開眼法要は、さらに別途1〜3万円が目安です。 地域や寺院によって幅があるので、迷ったら菩提寺に「他の檀家さんはどのくらい包まれていますか」と伺うのが確実です。

Q 三回忌以降は減らしていいですか?
A

段階的に減らすのが一般的な慣習です。 三回忌は1〜5万円、七回忌からは1〜3万円で据え置く家庭が多くなっています。 法事は数十年にわたって続くものですから、無理のない金額で続けていくことが何より大切です。 「故人を偲ぶ気持ちは変わらないけれど、家族や親族の生活も続いていく」という現実に即した知恵です。

Q 戒名料はお布施に含まれますか?
A

地域や寺院によって扱いが2つに分かれます。 一括包む地域では葬儀のお布施と戒名料をまとめて「お布施」として包み、別包みの地域では葬儀のお布施と戒名料を別々の封筒に分けて包みます。 どちらが正しいということはなく、菩提寺や地域の慣習に従ってください。 葬儀社紹介の僧侶の場合は、葬儀社スタッフが教えてくださることがほとんどです。

Q 戒名のランクが高いほどお布施は上がりますか?
A

位号が上がると目安も上がるのは事実です。 信士・信女10〜50万円、居士・大姉50〜80万円、院号80万円以上が一般的な幅です。 ただし「高い戒名=故人を立派にする」という理解は、本来の戒名のあり方からは少し離れています。 戒名はランクや格付けではなく、亡くなった方が仏弟子として歩み始めるための名前です。 ご家族の信仰・故人とお寺との関わり・経済的なご事情を踏まえてお選びください。

Q 封筒は何を使いますか?
A

白無地の封筒、奉書紙、水引なしのお布施用封筒のいずれかが一般的です。 香典と違って、お布施に水引はつけないのが本来の作法です。 お布施は不祝儀ではなく寺院への寄進だからです。 表書きは「御布施」または「お布施」、その下に施主の氏名または「○○家」を書きます。 市販の水引付き御布施袋を使うこと自体は間違いではなく、地域慣習によります。

Q お札は新札と折り目入り、どちらですか?
A

お布施は寄進であって弔事の不祝儀ではないので、あまり厳格に考える必要はありません。 新札でも折り目入りでも構いません。 気になる方は、新札を一度軽く折って使うとよいでしょう。 お札の向きは、肖像が封筒の表側を向くように、上向きに揃えて入れます。 慶事ほど厳格ではないので、迷い過ぎないでください。

Q お布施が払えないときはどうすればいいですか?
A

まず菩提寺に正直に相談してください。 分割でのお納め、相場より控えめなお布施、後日改めてお礼する形など、多くの寺院は無理のない範囲で受けてくださいます。 葬儀社紹介僧侶の場合は、葬儀社に控えめなプランの相談を。 さらに国民健康保険からの葬祭費(1〜7万円)や、生活保護受給者向けの葬祭扶助制度もあります。 市区町村の国保年金課や福祉事務所が窓口です。 これらは「もしもの時の安全網」で、利用を恥ずかしく思う必要はありません。

主な参考資料・出典

本記事の作成にあたり、以下の公的機関・宗派公式・主要葬儀社・冠婚葬祭関連団体の情報を参考にしました。

宗派や地域によって細かな違いがあるため、迷ったときは菩提寺・地域の葬儀社・お住まいの市区町村窓口に一度ご相談されることをお勧めします。

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僧侶歴 10年以上 関わったご家族 数百件 終活・葬儀・墓じまい

終活・葬儀・お墓のこと、そして日々の整え方を、檀家さんと向き合ってきた経験からお伝えしています。聞きにくいことを正直に、難しいことをやわらかく。

※プロフィール画像は本人写真の代わりに、お坊さんを表すイラストを使用しています。記事内容は実体験に基づくものですが、ご相談者の特定を避けるため、地名・寺院名は伏せています。

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