戒名とは|意味・位の違い・お布施の相場をやさしく解説
50代の方
親の戒名料が怖くて…。相場はいくらでしょうか。
お坊さん
本来「料金」ではなく、お布施でいただくものですよ。
「親が亡くなったとき、戒名にいくら包めばいいのか」「位によってずいぶん金額が違うらしいけれど、何が違うのか」——そんなご不安から、戒名を検索される方が増えています。
戒名は「死後につける名前」と思われがちですが、本来は仏弟子としていただく名前です。
生前にお受けすることもできます。
そして金額の幅は、位号(信士・居士・院号など)によって10万円から100万円以上まで大きく違います。
ご法事のあとに、ご年配の方や子世代の方から「戒名料はいくらが相場ですか」「うちは院号をいただくべきでしょうか」とのご相談を、毎月のように受けています。
この記事は、曹洞宗住職として現場でご家族と向き合ってきた目線で、いま戒名を考え始めた方が「うちの場合どの位号でいくらかかるのか」「自分でつけられるのか」「生前に受けられるのか」を判断できるように整理しました。
なお、お名前の呼び方は宗派によって違います。
浄土真宗では「法名」、日蓮宗では「法号」と呼びます。
本記事は宗派共通の基本を中心に書いていますので、浄土真宗・日蓮宗の方は呼び方を読み替えてお読みください(詳しい違いは別記事で解説する予定です)。
※ この記事は最後まで読まなくてかまいません。気になる章だけお読みください。
戒名とは何か(仏教徒の名前の意味)
50代の方
なぜ亡くなった方には別の名前をつけるのですか?
お坊さん
じつは戒名は「死後の名前」ではないのですよ。
戒名(かいみょう)は、仏教の世界に入った方がいただく仏弟子としての名前です。
「戒(かい)」とは仏教徒として守るべき生き方の指針のことで、その戒を受けた証としていただくお名前なので「戒名」と呼びます。
多くの方は「戒名は亡くなったときにつけるもの」と思っておられます。
確かに現代の日本では、お葬式のときに授ける形が一般的になりました。
けれども本来は生きているうちに受戒(じゅかい)してお授けいただくものです。
後ほどの章でご紹介する「生前戒名」は、この本来の形に戻っただけ、とも言えます。
戒名には大きく3つの意味があります。
- 仏弟子の証: お釈迦さまの教えを受け継ぐ仏弟子になった、という証としての名前です
- 戒を受けた誓い: 仏教徒として「いのちを大切にする」「うそをつかない」など、よりよく生きる指針を受け取った誓いの名前です
- あの世への名乗り: 亡くなったあと、あの世で仏さまに「私は仏弟子です」とお見せする、いわば名刺のような役割もあります
つまり戒名は、「死後に必要になるから慌ててつけるもの」ではなく、生き方そのものを支える名前なのです。
このことを知っておくと、戒名にお包みするお布施の意味合いも、ずいぶん違って受け取れるはずです。
仏弟子の証としていただく名前
仏教は、いまから二千五百年ほど前にお釈迦さまがインドで説かれた教えです。
お釈迦さまの教えに帰依(きえ)し、仏弟子になることを「三帰依(さんきえ)」と申します。
仏・法・僧——お釈迦さま、その教え、そしてそれを学び合う仲間——この三つに身をゆだねますという表明です。
この三帰依の儀式(受戒会・じゅかいえ)でお授けいただくのが、戒名です。
生まれたときに親からいただいた俗名(ぞくみょう・ふだんのお名前)に対して、仏弟子になった証として新たにいただくお名前なので、戒名は「もう一つのお名前」と表現することもできます。
俗名と戒名は対立するものではなく、ひとりの方の「ふだんの顔」と「仏弟子としての顔」の二つを表すものとして両立します。
位牌(いはい)には戒名が刻まれますが、葬儀のあいだは俗名でお呼びする場面もあります。
どちらが正式ということではなく、どちらもその方を表す大切なお名前です。
受戒の起源(インドから日本へ)
戒名の起源は、お釈迦さまの時代までさかのぼります。
インドで仏教教団に入る方は、お師匠さまから戒律をお授けいただき、仏弟子としての名(法名)を授かりました。
これが受戒の原点です。
その後、仏教は中国を経て日本に伝わります。
日本で本格的に受戒の制度が整えられたのは、奈良時代に唐から鑑真和上(がんじんわじょう)が渡来されてからです。
鑑真和上は東大寺に戒壇院(かいだんいん)を建立し、聖武上皇をはじめ多くの方に正式の戒をお授けになりました。
これが日本における正規の受戒の始まりとされています。
平安時代以降、各宗派がそれぞれの戒法を整え、僧侶だけでなく在家信徒(ふだんは家庭で仕事をしている信者の方)にも戒を授ける形が広がっていきました。
このため、戒名は「特別なお坊さんだけが持つもの」ではなく、仏縁を結ばれた方ならどなたでもいただけるものになっていったのです。
私の宗派である曹洞宗では、鎌倉時代に道元禅師(どうげんぜんじ)が中国(宋)から「正伝の仏法」と戒を伝え、永平寺をお開きになりました。
道元禅師は「仏祖正伝の戒」を授けることを大切にされ、その流れは現代の曹洞宗の授戒会(じゅかいえ)にも受け継がれています。
ですから、曹洞宗の住職としてお戒名をお授けする時には、800年前から続く道元禅師の戒の血脈を、今ご縁のあるご家族につなげていく、という気持ちでおります。
父は生前、信仰心が篤いほうではありませんでした。それでもお葬式の前夜、私は不思議な気持ちでお通夜に座っておりました。位牌に刻まれた戒名を見つめていると、「ああ、父も今夜から仏さまの弟子になるのだな」と、すっと胸に落ちたのです。生きているあいだに親しまれた俗名と、これから仏さまのもとで呼ばれる戒名と、二つあることの意味が、初めてわかった気がしました。
歴史の長い文化ですが、いま戒名をお受けになる方の気持ちは、案外このご家族のように素朴でまっすぐです。
「この方を仏弟子としてあの世へ送り出したい」というご家族の願いが、戒名というお名前に込められていきます。
「死後の名前」は誤解
戒名というと「亡くなった人につける名前」というイメージが強く、「縁起でもないので生きているうちに考えたくない」と仰る方もおられます。
これは大きな誤解です。
繰り返しになりますが、戒名は本来「生きているうちに」お受けするものです。
江戸時代以前は、お元気なうちに受戒会に参加して戒名をお受けになる方も少なくありませんでした。
お墓を生前に建てる「寿陵(じゅりょう)」と同じく、戒名も生前にお受けすることは縁起の悪いことではなく、むしろ長寿と功徳を願う行いとされてきました。
現代でも、ご自身の終活の一環として、お元気なうちに菩提寺で生前戒名をお受けになる方が増えています。
生前戒名には次のようなメリットがあります。
- お布施をご自分の意思でお決めできる(ご家族の判断に委ねずに済む)
- お寺とのご縁を生前から深めることができる
- 戒名そのものをお寺と相談して決められる(趣味・人柄を反映しやすい)
- ご家族の葬儀時の金銭的・精神的負担を軽くする
このように、戒名を「死後に慌てて用意するもの」と捉えるのではなく、「生きているうちから準備できるもう一つのお名前」と捉え直すと、選択肢がぐっと広がります。
詳しくは後ほど第9章「生前戒名のすすめ」でご紹介します。
葬儀全体の費用感とあわせて把握されたい方は、こちらの記事もご参考になさってください。
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戒名の構成(院号・道号・戒名・位号)
50代の方
父の戒名は9文字。どこで区切るのでしょう?
お坊さん
戒名は4つのパーツでできているのですよ。
戒名は、ぱっと見ると長い漢字の連なりに見えますが、じつは4つのパーツから成り立っています。
「院号(いんごう)」「道号(どうごう)」「戒名(かいみょう・狭い意味で)」「位号(いごう)」の4つです。
たとえば「慈光院 法雲 永誓 居士」というお名前であれば、慈光院が院号、法雲が道号、永誓が狭い意味での戒名、居士が位号、ということになります。
これを並べて全体で「戒名」と呼ぶこともあるため、用語が紛らわしいのですが、「広い意味の戒名(全体)」のなかに「狭い意味の戒名(2文字)」が含まれているとお考えいただくとわかりやすいです。
なお、この4ブロック構成は曹洞宗・真言宗・浄土宗・天台宗・臨済宗など、いわゆる「戒名」とお呼びする宗派で広く共通する形です。
浄土真宗の「法名」、日蓮宗の「法号」は構造そのものが違います(法名は「釋+2字」が基本、法号は宗祖からの一字をいただく形があります)。
これらは別記事で詳しくご紹介する予定です。
4つのパーツの並びと意味
それぞれのパーツが何を表しているのか、順にご紹介してまいります。
| 位置 | パーツ | 典型字数 | 何を表すか |
|---|---|---|---|
| 1番目 | 院号(いんごう) | ◯◯院 / ◯◯院殿 | お寺への貢献・社会的功績・人徳の高さ。授けられない方も多く、必須ではない |
| 2番目 | 道号(どうごう) | 2字 | お人柄・趣味・職業・信仰の道。生き方そのものを映す名 |
| 3番目 | 戒名(狭義) | 2字 | 仏弟子としての名。俗名から一字を取ることが多い |
| 4番目 | 位号(いごう) | 信士・居士・大姉など | 仏教徒としての位(信仰の篤さ・年齢・性別など) |
順を追って意味をたどってまいりましょう。
院号は、戒名のいちばん最初に置かれるお名前で、お寺への貢献や社会的功績、お人柄の高さを表します。
「◯◯院」または「◯◯院殿」という形を取り、たとえば「慈光院」「徳寿院」のように、その方を象徴するような言葉が選ばれます。
必須ではなく、授けられないお戒名のほうが多数派です。
院号を授かるかどうかは、菩提寺との関係性や、お寺・地域への貢献の深さによって判断されます。
詳しくは第3章「位号の種類と意味」でご説明します。
道号は、お人柄・趣味・職業・信仰の道を映す2文字のお名前です。
生前の生き方そのものを象徴することが多く、たとえば書道に親しまれた方なら「翰墨」、医療に従事された方なら「仁愛」、お花を愛された方なら「華心」など、ご本人のお人柄をしのばせる字が選ばれます。
住職にとっては、ご家族から故人のエピソードを伺いながら考えを巡らせる、もっとも工夫のしがいのあるパーツです。
戒名(狭義の戒名)は、4ブロック全体のなかで「仏弟子としての名」をもっとも端的に表す2文字です。
俗名から一字を取ることがよくあります。
たとえば俗名「太郎」さまであれば「太山」、俗名「花子」さまであれば「華月」、というふうに、お名前の面影を残しつつ仏教的な意味のある字を組み合わせます。
「ふだんのお名前と仏弟子のお名前を、一字でつないであげる」というのが、住職の心遣いの一つです。
位号は、戒名の最後に置かれる「信士」「信女」「居士」「大姉」「院号院殿大居士」などの称号です。
仏教徒としての位、つまり信仰の篤さや、お寺との関わり方の深さなどを表します。
男性と女性で字が異なり、お子さまには専用の位号があります。
位号はお布施の金額にもっとも大きな影響を与えるパーツでもあるため、第3章で詳しくご紹介します。
字数のきまり(位牌の文字数)
戒名は、4ブロックを足すとだいたい6文字から9文字になることが多くあります。
位牌や墓石に刻むときには、この文字数にあわせた配置・字の大きさが決まってまいります。
字数別に整理すると、次のようなパターンが代表的です。
- 6字戒名: 「◯◯ ◯◯ 信士/信女」のように、院号がなく、道号・戒名・位号を組み合わせた最もよくある形
- 7〜8字戒名: 「◯◯院 ◯◯ ◯◯ 信士」のように、院号が加わったかたち
- 9字戒名: 「◯◯院 ◯◯ ◯◯ 居士/大姉」など、居士・大姉位の方が院号をいただいた形
- 11字戒名: 「◯◯院殿 ◯◯ ◯◯ 居士」など、最高位の院殿大居士・院殿大姉位
字数が多ければ「立派」というわけではありません。
位号の重みと、院号の有無によって字数が決まり、それぞれにふさわしい意味が込められています。
「うちは6字でいいのか」と気にされる方がおられますが、6字戒名でも仏弟子としてのお名前としての価値はまったく同じです。
位牌や墓石には、戒名のほかに没年月日・俗名・享年を一緒に刻みます。
位牌の文字配置は宗派・地域・お寺によって慣習が異なりますので、菩提寺さまにご相談されるのが確実です。
読み方(音読み・訓読み・連声)
戒名は基本的に音読みでお読みします。
たとえば「慈光院 法雲 永誓 居士」であれば「じこういん ほううん えいせい こじ」となります。
日常の俗名は訓読みが多いのに対して、戒名は中国伝来の仏教の伝統に従って音読みでお読みする、というのが原則です。
ただし、いくつか例外もあります。
- 連声(れんじょう): 前の字の終わりと次の字の頭が変化することがあります。たとえば「観音」を「かんのん」と読むのと同じ仕組みで、戒名のなかでも「ん+ア行」が「ん+ナ行」に変化することがあります
- 訓読みの慣習: お子さまや女性の戒名で、ご家族のお気持ちを尊重して訓読みでお読みする場合もあります
- 方言や地域の習慣: 北海道から沖縄まで、地域や宗派でお読み方の慣習に違いが見られます
戒名のお読み方に迷われたときは、菩提寺の住職さまに直接お聞きいただくのが確実です。
お葬式や法事でお呼びするときに、ご住職とご家族で読み方が違ってしまうと、せっかくのお名前の重みが薄れてしまいますので、最初に「ふだんはどうお読みしましょうか」と確認されるとよろしいかと存じます。
位号の種類と意味(信士・居士・院号)
50代の方
お隣は「居士」、うちは「信士」。何が違うのでしょう?
お坊さん
段階はありますが、「位が高い=偉い」ではないのですよ。
戒名の最後についている「信士」「信女」「居士」「大姉」などの称号を、位号(いごう)と申します。
位号は仏教徒としての位、つまり信仰の篤さやお寺との関わり方の深さなどを表すお名前です。
位号には段階があり、大きく整理すると信士・信女がもっとも一般的で、その上に居士・大姉、さらに上に院号院殿大居士・院殿大姉というように積み重なっていきます。
お子さま用には専用の位号があり、生まれて間もないお子さまには「嬰子(えいじ)・嬰女」、幼児には「童子(どうじ)・童女(どうにょ)」が用いられます。
ただし、ここでもっとも大切なことを最初にお伝えします。
位号は「人としての価値の上下」を決めるものではありません。
「居士のほうが信士より立派」とか「院号がないと成仏できない」というような考え方は、本来の仏教の教えにありません。
位号は、その方とお寺との関わり方や、お寺・地域への貢献度を表す称号にすぎず、信士でお戒名をいただいたお父さまも、居士でお戒名をいただいたお父さまも、仏弟子としての価値はまったく同じです。
このことを最初にお伝えしておかないと、ご家族のあいだで「うちは信士だから劣っている」というような気持ちになってしまうことがあるためです。
信士・信女(最も一般的)
信士(しんじ)と信女(しんにょ)は、戒名の位号のなかでもっとも数が多く、現代の在家信徒の方の過半数がこの位号でお戒名をいただいています。
男性が信士、女性が信女です。
「信」という字は、仏教を信じ、仏弟子として帰依された方、という意味を表します。
生前にお寺との関わりが深かった方も、それほど深くなかった方も、仏教を信じてあの世へ旅立たれるという共通の意味で、信士・信女のお戒名をお受けになります。
信士・信女のお戒名で、何か劣っていたり、寂しかったりすることはありません。
むしろ「多くの方と同じ立ち位置で、自然なかたちで仏弟子になられた」という、もっとも素直なかたちです。
お布施の相場は、地域や宗派・お寺との関係によって幅がありますが、一般的に10〜30万円とされることが多くあります(詳しくは第5章でご紹介します)。
居士・大姉(信仰心が篤い方)
居士(こじ)と大姉(だいし)は、信士・信女より一段上にあたる位号です。
男性が居士、女性が大姉です。
「居士」という言葉はもともとインドで、出家せずに在家のまま仏教を熱心に信じ実践する方を指す言葉でした。
日本でも同じく、お寺の活動を熱心に支えてこられた方、信仰心が篤い方、地域や教化に貢献された方に居士・大姉位がお授けされます。
居士・大姉位を受けるための明確な「条件」というものはなく、菩提寺との関係性や、お寺・地域への貢献の深さを総合的に住職が判断することになります。
たとえば次のような方が、居士・大姉位を授かることが多くあります。
- 長年、菩提寺の檀家総代やお世話人を務めてこられた方
- お寺の建立や修繕に大きなご寄進をなさった方
- 地域の教化活動・布教活動に貢献してこられた方
- 仏教書や経典に親しみ、深く学んでこられた方
- ご家庭で長く仏壇をお守りし、ご先祖の供養を欠かさなかった方
お布施の相場は、30〜80万円とされることが多いですが、菩提寺との関係性によって大きく変わります。
生前に居士・大姉位を希望される場合は、菩提寺の住職に「私はどの位号がふさわしいでしょうか」とお尋ねになるのが確実です。
住職としては「ふさわしいかどうか」というよりも「その方の生き方を、どんな称号でお見送りするのがいちばん自然か」を考えてご判断申し上げます。
院号・院殿号(社会的功績や寺院への貢献)
院号(いんごう)は、戒名のいちばん最初にお置きするお名前で、お寺への貢献や社会的功績の大きい方に授けられます。
「◯◯院」という形を取り、たとえば「慈光院」「徳寿院」のような形になります。
さらに重い称号として院殿号(いんでんごう)があり、こちらは「◯◯院殿」という形で、武家や大名・特別の貢献者にお授けする最高位の称号でした。
現代では一般の在家信徒で院殿号をお授けすることはまれですが、お寺の建立に匹敵するような大きなご寄進をなさった方には今でも院殿号が授けられることがあります。
院号をお授けする判断は、それぞれの菩提寺の住職にゆだねられています。
一般的には次のような場合に検討されます。
- 菩提寺・寺院の建立や大規模な修繕にご寄進いただいた場合
- 長期間にわたって檀信徒総代や役員をお勤めいただいた場合
- 仏教の教化・布教に大きく貢献された場合
- 学術・芸術・社会奉仕で大きな功績を残された場合
- 一族として代々お寺を支えてこられた場合
院号のお布施は、一般的に80万円から、場合によっては数百万円に及びます。
これはお寺へのご寄進の意味合いを兼ねていることが多いためです。
なお、院号をいただくかどうかは強制ではなく、ご家族のお気持ちやお寺との関係で決めていただくものです。
子どもの位号
お子さまには、年齢に応じた専用の位号がございます。
一般的には次のように区分されます。
- 嬰子(えいじ)・嬰女(えいにょ): 生まれてまもなく亡くなられたお子さま(おおむね2〜3歳まで)
- 孩子(がいじ)・孩女(がいにょ): 幼児期のお子さま(地域によって)
- 童子(どうじ)・童女(どうにょ): おおむね4〜15歳のお子さま
- 水子(すいじ・みずこ): 流産・死産・人工流産で命を授かれなかったお子さま
お子さまの戒名には、ご家族のお気持ちに寄り添う配慮が随所に込められます。
詳しくは第8章「子ども・女性・特殊ケースの戒名」でご紹介します。
葬儀全体の費用感のなかで戒名のお布施がどう位置づけられるか、こちらの記事でも整理しています。
あわせて読みたい
葬儀費用の相場|形式別・地域別の目安と費用を抑える5つの方法
葬儀費用の全国平均と5つの内訳、お布施を含む費用感を曹洞宗住職が解説しています。
呼び方の宗派別違い(戒名/法名/法号)
50代の方
祖母の位牌に「釋」とあるのですが、これは戒名ですか?
お坊さん
それは「法名」と申します。浄土真宗の呼び方ですよ。
仏弟子としていただくお名前のことを、本記事ではこれまで「戒名」と呼んできました。
けれども、じつは宗派によって呼び方が異なるのです。
大きく分けると、戒名・法名・法号の3つの呼び方があります。
呼び方が違う理由は、それぞれの宗派の教えの違いに基づいています。
本章では呼び方の違いを概観でご紹介し、それぞれの宗派の戒名・法名・法号の詳しい構造や授かり方は、宗派別の専門記事で別途ご紹介する予定です(後述)。
戒名と呼ぶ宗派(曹洞・真言・浄土・天台・臨済)
戒名とお呼びするのは、曹洞宗・真言宗・浄土宗・天台宗・臨済宗などの宗派です。
これらの宗派では、仏教徒として守るべき「戒」を受けた証としてお名前をいただく、という考え方を共通しています。
これまで本記事でご紹介してきた4ブロック構成(院号・道号・戒名・位号)も、これら戒名族の宗派で広く共通する形です。
位号も信士・信女・居士・大姉・院号といった同じ体系を使います。
ただし、宗派ごとに細かな違いはあります。
たとえば真言宗では位号や字の選び方に独特の慣習があり、浄土宗ではお念仏の信仰を反映した字が選ばれることが多くあります。
曹洞宗の戒名にも、禅の精神や道元禅師の教えを反映した独特の考え方があります。
たとえば曹洞宗の道号には、「道」「禅」「空」「心」「無」といった禅の精神を映す字が選ばれることが多くあります。
「道徳院」「禅心居士」「空山信士」のように、ふだんお寺でお参りされる時に唱える般若心経の言葉とも響き合うお名前を、住職は心がけてお付けしてまいります。
これらの宗派ごとの違いについては、それぞれの専門記事で詳しくご紹介する予定です。
法名と呼ぶ宗派(浄土真宗)
浄土真宗では、戒名とは呼ばず「法名(ほうみょう)」と呼びます。
本願寺派(西本願寺)・大谷派(東本願寺)など、浄土真宗の各派で共通の呼び方です。
浄土真宗が「戒名」と呼ばないのには、教えの上で大切な理由があります。
浄土真宗では、阿弥陀仏のお力(他力)によって救われると信じる立場を取りますので、戒律を守ることで功徳を積むという考え方を取りません。
「戒を受ける」というプロセスがないため、戒名というお名前ではなく、阿弥陀仏の「法(みのり)」をいただいたお名前として「法名」とお呼びするのです。
法名の構造も、戒名とは違います。
基本形は「釋(しゃく)+2文字」です。
「釋」はお釈迦さまのお名前から一字を取ったもので、お釈迦さまの弟子としていただくお名前であることを示しています。
たとえば「釋浄信」「釋慈光」のような形になります。
位号(信士・居士など)はつけません。
法名の詳しい構造、授かり方、お布施の考え方などは、別記事「法名とは|浄土真宗のお名前」で詳しくご紹介する予定です。
法号と呼ぶ宗派(日蓮宗)
日蓮宗では、戒名とは呼ばず「法号(ほうごう)」と呼びます。
日蓮聖人を宗祖と仰ぐ日蓮宗の各派で共通の呼び方です。
日蓮宗の法号の構造には、日蓮聖人のお名前から「日」の字をいただくという独特の慣習があります。
「日◯」という形で日号をいただき、これにあわせて道号や位号を組み合わせます。
たとえば「妙法院 日真 居士」のような形になります。
なお、日蓮宗のなかでも、とくに信仰の篤い方には「妙法◯◯」という形で「妙法」の字を冠することもあります。
法号の詳しい構造、授かり方、お布施の考え方などは、別記事「法号とは|日蓮宗のお名前」で詳しくご紹介する予定です。
詳しくは別記事へ
本記事で扱っているのは、戒名・法名・法号に共通する基本的な意味・位号・お布施の考え方・つけ方・生前戒名などのお話です。
それぞれの宗派の独自の考え方や、深い教義に基づく細かな違いは、本記事では立ち入りません。
ご自身の宗派の戒名・法名・法号についてもっと詳しくお知りになりたい場合は、必ず菩提寺の住職さま、または本山公式サイトでご確認いただくことをおすすめします。
曹洞宗の戒名についてのみ、別記事で曹洞宗住職としての視点で詳しくご紹介する予定です。
戒名料・お布施の相場
50代の方
ネットで「戒名料は100万円が相場」と書かれていて、すごく不安です。
お坊さん
ご安心を。位号で幅があり、本来お布施なのですよ。
戒名のお話をする際に、もっとも気になるのが「いくらお包みすればよいか」というお話だと思います。
じっさいにご相談いただく方の8割以上が、まずこの相場のお話をお尋ねになります。
正直なところを申し上げると、戒名のお布施には「全国一律の相場」というものはありません。
地域・宗派・お寺との関係・位号によって、5万円から200万円以上まで、本当に幅があります。
それでも目安をお伝えしないと不安が解消されないと思いますので、本章では位号別のおおよその目安をお伝えしつつ、「料金ではなくお布施である」という本来の考え方も大切にお伝えしてまいります。
位号別のおおよその目安は次のとおりです。
あくまで一つの目安とお受け取りください。
- 信士・信女: 10〜30万円
- 居士・大姉: 30〜80万円
- 院号居士・院号大姉: 80〜100万円以上
- 院殿大居士・院殿大姉: 100万円以上(菩提寺との関係で大きく変動)
これらはあくまで目安で、地域差・宗派差・お寺との関係性で大きく変動します。
気になる金額帯についてのもっとも確実な確認方法は、菩提寺の住職さまにそのまま正直にお尋ねすることです。
「うちの分相応の位号でお願いしたい。
お布施はどのくらい包めばよろしいでしょうか」とご相談されると、住職としても遠慮なくお応えしやすいですし、たいていの場合「お気持ちで結構です」のような濁し方ではなく、目安をお伝えします。
70代の方
私の戒名のお布施で子どもに迷惑をかけたくないんです。
お坊さん
そのお気持ち、生前戒名で軽くできますよ。後ほどご紹介します。
位号別の相場(10〜200万円帯)
それぞれの位号について、もう少し詳しくご紹介してまいります。
信士・信女のお布施は、一般的に10〜30万円が一つの目安となります。
地方では10万円前後、都市部では20万円前後がもっとも多い帯のようです。
葬儀全体のお布施(読経料を含む)として30〜50万円とまとめてお包みする場合は、そのなかに戒名のお布施も含まれていることが一般的です。
居士・大姉のお布施は、30〜80万円が目安です。
信士・信女より一段上の位号となるため、お布施もそれに応じて重くなります。
長年お寺を支えてこられたご家庭が居士・大姉位を授かることが多いため、菩提寺との関係性によっては相場の上限を超えることもありますし、逆に長いご縁を踏まえて控えめな金額で受け止めていただくこともあります。
院号居士・院号大姉のお布施は、80〜150万円が一つの目安です。
院号は社会的功績やお寺への大きなご貢献に対して授かる称号ですので、お布施もご寄進の意味合いを兼ねることが多くあります。
「お寺の屋根の修繕費にお役立てください」というようなご意向で、院号にあわせてご寄進をなさる方もおられます。
院殿大居士・院殿大姉のお布施は、100〜200万円以上になることが多くあります。
これは現代の在家信徒では非常にまれな最高位の称号で、お寺の建立や大規模な修繕などに匹敵するご貢献に対する称号と位置づけられます。
なお、これらは戒名のお布施だけの金額です。
葬儀全体では、これに加えて読経料・通夜法要・繰上初七日・お車代・お膳料などをお包みすることが一般的です。
葬儀全体のお布施のお話は、別記事で詳しくご紹介しています。
「戒名料」という呼び方の注意点
ここで、住職として一つお伝えしたいことがあります。
世間では「戒名料」という言葉が広く使われていますが、本来お寺では「戒名料」とは呼ばず「お布施」とお呼びします。
「戒名料」という言葉は、「お金を払って戒名を買う」というニュアンスを含んでしまいます。
しかし戒名は、商品のように対価を払って購入するものではありません。
仏弟子になる方への菩提寺さまへのお礼の気持ちと、お寺へのご供養を兼ねたお布施として、お包みするものです。
近年、ニュースなどで「戒名に100万円取られた」「戒名は高すぎる」というような報道を目にされた方もおられるかもしれません。
これらの報道で扱われているのは、たいていの場合菩提寺との関係がない方が、葬儀社や僧侶派遣サービス経由でお寺をご紹介され、そのまま位の高い戒名をお願いされたケースです。
菩提寺と長くお付き合いのあるご家庭では、相場のなかでも納得のいく金額でお戒名をお受けになることがほとんどです。
これはお寺と檀信徒の信頼関係のなかで、お互いに無理のない金額で長くお付き合いいただくという考え方が根底にあるからです。
お布施の本来の意味
お布施という言葉の本来の意味を、ここで一度整理させてください。
お布施は仏教の「六波羅蜜(ろくはらみつ)」という大切な教えの一つで、「執着を手放し、相手のためにお与えする」修行の一つとされています。
つまりお布施は、お寺や住職へのお礼ではなく、お包みする方ご自身の修行の一つでもあるのです。
曹洞宗で大切にしている『修証義(しゅしょうぎ)』というお経のなかに、「布施というは貪らざるなり(むさぼらざるなり)」というお言葉があります。
これは、お布施とは執着を手放し、自分のものを惜しまずお与えする修行である、という道元禅師以来の教えです。
ですから、お布施のお包みは「いくら払うか」ではなく、「ご家族のお気持ちでどれだけ惜しまずお出しできるか」というお気持ちが本来の姿です。
お包みする金額には、その方のお気持ち・経済状況・お寺との関係などが反映されます。
葬儀のお布施は、おおむね4つの内訳でできています。
- 戒名のお布施: 仏弟子としていただくお名前へのお礼
- 読経料: 通夜・葬儀・告別式での読経への謝礼
- お車代: 住職にお越しいただいたお車代(5,000〜10,000円)
- お膳料: 住職に食事を召し上がっていただけない場合のお代わり(5,000〜10,000円)
これらをまとめて葬儀のお布施としてお包みすることが一般的で、内訳を分けてお包みする必要はありません。
一般的には白い無地の封筒に「御布施」と表書きし、住職にお渡しします。
父の葬儀のとき、お布施を渡すのが恐ろしかったんです。失礼があったらどうしよう、いくら包めばいいんだろうと。でもご住職に正直に「いくらが相場でしょうか」とお尋ねしたら、「お気持ちで結構ですけれど、この地域では信士で◯万円、居士で◯万円が一般的ですよ」と教えてくださいました。それで初めて肩の力が抜けました。「料金じゃない」というご住職のお話を聞いて、お布施の本来の意味も少しわかった気がしました。
このように、わからないことは住職に直接お聞きいただくのが、結局はもっとも安心できる道です。
住職としても、ご家族の不安に寄り添ってお応えするのは、私どもの大切なお勤めです。
院号・院殿号取得の意味
院号や院殿号を授かることについて、もう一言だけお伝えしたいことがございます。
院号や院殿号は、お布施の金額が高額になります。
100万円以上のご寄進をお寺にお包みすることになりますので、「うちにそんな余裕はない」と感じられるご家族のほうが多いのが現実です。
院号を授かるご決断は、「お寺への感謝とご寄進の意味」が中心であって、ご家族の見栄や対面で決めるものではありません。
菩提寺との長いご縁のなかで、ご家族が自然にそうしたいと思われるとき、住職に「院号をお願いできますか」とご相談されるのがもっともよい流れです。
住職としても、ご家族のお気持ちを尊重してお応えします。
葬儀全体のお布施の組み立てや、家族葬での費用感についてはこちらの記事も参考になります。
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誰が戒名を授けるのか
50代の方
父はお寺との縁が薄いのですが、戒名は授かれますか?
お坊さん
ご安心を。授かる道は3つ用意されているのですよ。
戒名はだれが授けるものなのか——これも、戒名についてのご相談で頻繁にいただくお話です。
「うちは菩提寺がない」「お寺との関わりがほとんどない」というご家族でも、戒名を授かる道はちゃんと用意されています。
戒名を授ける方法は、大きく分けると3つのルートがあります。
それぞれの特徴と注意点を、順にご紹介してまいります。
菩提寺の住職に授かる(基本)
戒名を授かるもっとも基本的な道は、菩提寺(ぼだいじ)の住職に授けていただくことです。
菩提寺とは、ご先祖代々のお墓がある、または檀信徒(だんしんと)として長くお付き合いのあるお寺のことです。
菩提寺の住職は、ご先祖代々の戒名・宗派の伝統・ご家族の歴史を踏まえた上で、ふさわしいお戒名を授けてくださいます。
たとえば「お父さまのご先祖は代々、道号に『法』の字をいただいてきましたから、お父さまにも『法』のつくお名前にしましょう」というふうに、ご家族の流れを大切にした戒名になります。
菩提寺で戒名を授けていただくメリットは、お布施の金額についても長いお付き合いの信頼関係のなかで相場の控えめな帯でお受けいただきやすいことです。
一見でお願いされる方より、ご縁の深いご家族のほうが、住職としても無理のない金額でお応えします。
父の葬儀のとき、菩提寺のご住職が「お父さまのお父さま、つまりおじいさまの戒名は『◯◯院 法雲 徳善 居士』でしたから、お父さまにも『法』の字を引き継ぎましょうね」とおっしゃってくださったんです。父とおじいちゃんが、戒名でつながる——。それを聞いた瞬間、涙が止まりませんでした。
ただし、菩提寺がないご家庭、ご縁が長く途絶えているご家庭では、この道は使えません。
次の2つの方法を選ぶことになります。
葬儀社の僧侶派遣
菩提寺がない場合、葬儀社が紹介してくれる僧侶に戒名を授けていただく道があります。
葬儀社は地元のお寺と提携しており、ご家族の宗派にあわせて住職を手配してくださいます。
葬儀社の僧侶派遣のメリットは、葬儀の準備と一括して手配できることです。
葬儀社のご担当者に「菩提寺がないので、住職もお願いしたい」とお伝えになれば、葬儀全体の流れのなかで戒名授与の段取りも組んでいただけます。
お布施の金額も、葬儀社が事前に住職と相談して「このお葬式の場合、お布施は◯万円が目安」と教えてくださることが多くあります。
ただし、葬儀社の僧侶派遣には注意点もあります。
- 葬儀のときだけのご縁となり、その後のご法事は別途手配が必要になることがある
- お布施の金額が葬儀社のマージンを含む場合があり、菩提寺ルートより高めになることがある
- 戒名の内容が定型的になりやすく、ご家族のお人柄を反映しにくい
葬儀社の僧侶派遣をご利用される場合は、戒名の内容についてもご希望をお伝えになることをおすすめします。
たとえば「お父さまは書道が好きでした」「お母さまは花が好きでした」とお伝えになれば、住職もそれを反映した戒名を考えてくださることがあります。
お坊さん派遣サービス
近年は、インターネット経由で住職を手配できるお坊さん派遣サービスもあります。
葬儀社経由ではなく、ご家族が直接サービスに依頼して、宗派や日程にあわせて住職を派遣していただく仕組みです。
お坊さん派遣サービスのメリットは、お布施の金額が事前に明示されていることです。
たとえば「戒名込みで◯万円」というかたちでパッケージ料金が示されているため、いくらお包みすればよいか迷うことがありません。
ただし、こちらにも注意点があります。
- 派遣される住職は毎回別の方になることが多く、ご家族との長いご縁にはなりにくい
- 戒名の内容も標準的なパターンになることがある
- ご法事のたびに改めて手配する必要がある
お坊さん派遣サービスは、「とりあえず葬儀をきちんとお勤めしたい」「菩提寺をすぐに見つけられない」というご家族にとっては、安心できる選択肢の一つです。
サービスをご利用されたうえで、その後ゆっくりと菩提寺を探していくこともできます。
自分でつけることの是非
最後に、戒名を自分でつけるという選択肢についてもお話ししておきます。
近年、終活関連の書籍やサイトで「戒名は自分でもつけられる」「お金を払わずに自作する方法」というような情報を目にされた方もおられると思います。
法律上は、戒名を自分でつけることは禁じられているわけではありません。
お墓に自作の戒名を刻むことも、法的には可能です。
ただし、住職としての立場から正直にお伝えしますと、自分でつけた戒名は「仏弟子としての名」とは厳密には言えません。
戒名はもともと「戒を受けた証」として授かるお名前で、住職から授けていただくところにこそ意味があります。
自作の戒名は、ご家族が想いを込めて選んだお名前であっても、「仏教の伝統に基づく戒名」とはやや違う位置づけになることはご理解いただきたいです。
それでも、菩提寺がなく、葬儀社の僧侶派遣もお坊さん派遣サービスも使わない、というご家族には、自作という選択肢もあります。
その場合は、「戒名」というよりも「故人を偲ぶお名前」として位牌に刻まれるのがよろしいかと思います。
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戒名のつけ方・決まり方
50代の方
住職はどうやって戒名を決めてくれるのですか?
お坊さん
故人さまのお人柄を伺ってお決めするのですよ。
70代の方
自分の戒名に好きな字を入れてもらえますか?
お坊さん
ご希望はぜひお聞かせください。住職は反映します。
戒名がどのように決まっていくのかは、住職以外の方にはあまり知られていないお話です。
けれども「ご家族のお話を伺いながら、住職が一字一字を選んでいく」というのが、戒名のもっとも本質的なつけ方です。
戒名を決めるときには、おおよそ次の5つのステップを踏みます。
お寺によって順番が前後することはありますが、基本的にはこの流れで考えられています。
故人の人柄を映す
戒名決定のもっとも大切なステップは、故人さまのお人柄を伺うことです。
住職はご家族から、故人さまの生き方・お人柄・趣味・大切にしておられたこと——できるだけ詳しくお聞きします。
たとえば次のようなことを伺います。
- どのような仕事をされていたか
- 趣味は何だったか(書道・園芸・釣り・茶道など)
- ご家族にどんな言葉をよくおかけだったか
- ご性格はどんな方だったか(穏やか・厳しい・面倒見がよいなど)
- 信仰心はどのようなお気持ちでおられたか
- 子どもや孫にどんなことを願っておられたか
- ご家族にとって、どんな存在だったか
これらのお話のなかから、住職は故人さまのお人柄を象徴する一字を選んでいきます。
たとえば穏やかなお人柄でいらっしゃった方なら「穏」「和」「静」、ご家族を大切にされた方なら「家」「慈」「親」、書道に親しまれた方なら「書」「翰」「墨」というように、故人さまの生き方そのものを映す字が選ばれます。
このステップは、住職にとってももっとも工夫のしがいのある時間です。
ご家族のお話を伺いながら、亡くなられた方の生涯を心のなかで描き、その方にもっともふさわしいお名前を考えていく——これは住職の大切なお勤めです。
俗名の一字を取り入れる
故人さまのお人柄を伺ったあと、次のステップとして俗名の一字を戒名に取り入れることを検討します。
これは、ご先祖と故人さまをつなぐ一つの慣習で、必ずではありませんが、多くのお寺で大切にされています。
たとえば俗名「太郎」さまであれば「太」の字を、俗名「美智子」さまであれば「美」または「智」の字を取り入れます。
狭い意味の戒名2文字のうち、1文字を俗名から、もう1文字を仏教的な意味のある字から選ぶ、という組み合わせがよくあります。
俗名の字を取り入れることは、ご家族に「お父さま、お母さまだとひと目でわかる戒名」になるという安心感を与えます。
位牌や墓石に刻まれた戒名を見たときに、「あ、お父さんだ」と直感的にわかる——これも戒名の大切な役割の一つです。
趣味や仕事を映す
戒名のなかでも道号(2文字)には、故人さまの趣味や仕事を映すことが多くあります。
これは戒名のなかでも、もっとも個性が反映されるパーツです。
たとえば、こんな道号の例があります。
- 書道に親しまれた方: 翰墨(かんぼく)、墨芳(ぼっぽう)、書林(しょりん)
- お花を愛された方: 華心(けしん)、花徳(かとく)、菊翁(きくおう)
- 教育に関わられた方: 仁徳(じんとく)、育英(いくえい)、慧光(えこう)
- 医療に従事された方: 仁愛(じんあい)、慈恩(じおん)、救心(きゅうしん)
- 商売をされていた方: 誠信(せいしん)、義誠(ぎせい)、厚徳(こうとく)
- 農業に従事された方: 耕心(こうしん)、田林(でんりん)、豊穣(ほうじょう)
このように、故人さまの生き方そのものを字に込めることで、戒名を「その方だけの、ふさわしいお名前」に仕立てていきます。
避けるべき字
一方で、戒名には使うことを避ける字もあります。
これは仏教的な意味や、伝統的な慣習に基づく決まりごとです。
避けるべき字の一例:
- 不吉な意味を持つ字: 病、苦、凶、殺、災、悪、敗
- 天皇や皇室を連想させる字: 天、皇、宝、玉、大の組み合わせなど
- 宗祖や高僧のお名前: 道元(曹洞宗)、空海(真言宗)、親鸞(浄土真宗)、日蓮(日蓮宗)、最澄(天台宗)など
- 動物の名前: 猫、犬、牛、馬など(ただし龍・鶴など瑞祥動物は使われる)
- 俗名そのまま: 「太郎」「花子」のように俗名と完全一致は避ける(一字を取るのは可)
- 過度に派手な字: 仏教的な質素さに反するような字
これらの慣習はお寺・宗派・地域で違いがあります。
住職はこれらの伝統的な制限を踏まえた上で、故人さまのお人柄を映すお名前を考えていきます。
ご家族から「父はこんな字が好きだったので、戒名に入れてほしい」とご希望いただくのは構いませんが、避けるべき字に該当する場合は住職から「別の字でいかがでしょうか」とご相談させていただきます。
ご家族の終活のなかで、戒名や葬儀の希望を整理されたい方には、エンディングノートが助けになります。
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子ども・女性・特殊ケースの戒名
50代の方
小さく亡くなった妹の戒名は、大人と違うのでしょうか?
お坊さん
お子さまには年齢別の専用位号があるのですよ。
70代の方
昔の水子供養もお願いできるでしょうか…。
お坊さん
何十年経たれていても、いつでもお迎えします。
戒名にはいくつかの特殊なケースがあります。
お子さまの戒名、女性の戒名のうち少しご紹介できていない部分、水子の戒名、ペットの戒名、外国籍の方の戒名——本章ではこうしたケースをまとめてご紹介します。
子どもの位号(童子・童女・嬰子・嬰女)
お子さまには、年齢に応じた専用の位号があります。
一般的な目安は次のとおりです。
- 嬰子(えいじ)・嬰女(えいにょ): 生まれてまもなく〜2歳前後の乳児
- 孩子(がいじ)・孩女(がいにょ): 2〜5歳前後の幼児(地域や宗派によって)
- 童子(どうじ)・童女(どうにょ): 6〜15歳前後の児童
- 15歳以上: 大人と同じ位号(信士・信女など)
これらの年齢区分はあくまで目安で、宗派・地域・お寺の慣習によって違いがあります。
お子さまを亡くされたご家族には、住職から「お子さまには童子(または童女)位でお戒名を授けますね」とお声がけし、ご家族のお気持ちを丁寧にうかがった上で決めていきます。
お子さまの戒名は、大人の戒名以上に「ご家族のお気持ちに寄り添う」ことが大切にされます。
短い生涯でも、その方の人柄や、ご家族との思い出が必ずあります。
住職はそうしたお気持ちを伺いながら、お子さまにふさわしい一字一字を選びます。
なお、お子さまの戒名のお布施は、大人より控えめに設定されることが多くあります。
これは、お子さまを亡くされたご家族の心情への配慮と、戒名そのものの位号が信士・信女より下に位置づけられるためです。
具体的な金額は菩提寺さまにご相談されるのがよろしいかと存じます。
女性の大姉について
第3章でご紹介した位号のうち、女性の大姉(だいし)について、もう少し補足してまいります。
「大姉」は、男性の「居士」に対応する女性の位号です。
読み方は「だいし」が一般的ですが、地域によっては「たいし」「だいじ」とお読みすることもあります。
女性の位号は基本的に、男性の位号と同じく信仰心の篤さや貢献度に応じて段階があります。
- 信女(しんにょ): もっとも一般的・約半数以上の女性がこの位号
- 大姉(だいし): 信仰心が篤く、お寺や地域への貢献が大きい方
- 院号大姉: 社会的功績やお寺への大きなご貢献に対する称号
- 院殿大姉: 最高位
「うちの母は信女でいいのかしら、大姉のほうがいいのかしら」とご相談いただくこともあります。
住職としては、「お母さまの生き方にもっとも自然な位号」でお戒名を授けるのがよろしいかと考えます。
お母さまが菩提寺の婦人会で長くお勤めいただいていた、ご家族のためにお仏壇を毎日大切にお守りしていらっしゃった——こうした生き方そのものを伺いながら、住職と一緒にお考えになるのがよいでしょう。
水子戒名
流産・死産・人工流産でこの世にお生まれになれなかったお子さまには、「水子(すいじ・みずこ)」という位号でお戒名をお授けします。
水子戒名は、お子さまそのものではなく、「この世に来られなかった命を仏弟子として迎え入れる」意味でお授けします。
お母さまやご家族のお気持ちを慰める意味も大きく、水子供養の習慣は古くから日本の各宗派で大切にされてきました。
水子戒名のお布施は、お子さまの位号と同じく控えめに設定されることが多くあります。
一般的に5〜10万円程度が目安とされていますが、お寺によって違います。
水子戒名は、流産・死産から長い時間が経ったあとでも、お受けいただけます。
「もう何十年も前のことだから今さら…」と遠慮されるお母さまもおられますが、住職としては「いつおかえりいただいても、お子さまは仏弟子としてお迎えいたします」とお伝えしたいと思います。
水子供養と水子戒名は、お母さまご自身の心の整理にもつながるお勤めです。
気持ちが落ち着いたタイミングで、菩提寺かお近くのお寺にご相談されることをおすすめします。
ペットの戒名
近年、家族同様に大切にされていたペットを亡くされたご家族から、「ペットの戒名はいただけますか」というご相談が増えています。
仏教の本来の考え方では、戒名は仏弟子としていただくお名前で、人間に授けるものとされてきました。
けれども現代では、家族の一員としてのペットを大切に弔いたいというご家族のお気持ちを尊重して、ペットにも戒名(または「霊名」)を授けるお寺が増えています。
ペットの戒名は、お寺や宗派によって対応が大きく異なります。
- 戒名を授けてくださるお寺: ペットの個性を反映したお名前をいただける
- 「霊名」「法名」など別の名称で対応: 戒名とは区別しつつ、お弔いはしてくださる
- ペット専用のお寺: 全国にあるペット供養専門のお寺で対応してくださる
- 対応していないお寺: 仏教の本来の考え方を重視するお寺は、人間と同じ戒名は授けない場合がある
ご自身の菩提寺にご相談されるのが第一ですが、対応されないお寺の場合は、ペット供養専門のお寺にお願いされる選択肢もあります。
外国籍の方
外国籍の方が亡くなられた場合の戒名についても、お話しておきたいと思います。
外国籍の方であっても、生前に仏教徒でいらっしゃった方、または日本人のご家族と長く生活されご家族の宗派に親しまれていた方には、戒名をお授けすることに何ら問題はありません。
お名前のなかに、その方の出身国の文化や、ご家族との繋がりを反映する字を選ぶこともできます。
たとえば、英語名「メアリー」さまであれば、漢字に当てて「米麗」「眞理」のようなお名前を取り、それに仏教的な字を組み合わせた戒名にする、というかたちがあります。
住職は、「日本での生活を象徴する一字」と「ご出身国の文化への敬意」を両立させた戒名を考えます。
宗教の関係で戒名を望まれない場合(例: もとからキリスト教徒・イスラム教徒・ユダヤ教徒の方)は、もちろん戒名を授けることはありません。
戒名はあくまで仏弟子になることを願うご家族・ご本人のお気持ちに基づくもので、押し付けるものではないというのが大切な考え方です。
生前戒名のすすめ
70代の方
自分の戒名を生前に考えても良いのでしょうか…。
お坊さん
むしろ生前戒名は本来の形なのですよ。
戒名の本来の姿は、「亡くなってからつけるもの」ではなく「生きているうちに受戒してお授けいただくもの」です。
日本では江戸時代以降、葬儀の場で戒名を授ける形が定着したため、現代では「戒名=死後の名前」というイメージが強くなりましたが、お元気なうちに戒名をお受けすることは少しも縁起の悪いことではありません。
むしろ住職としては、終活を考えておられる皆さまに、ぜひ「生前戒名」という選択肢を知っていただきたいと思っています。
本記事の最後の章として、生前戒名のすすめについて詳しくご紹介します。
自分で受戒するという選択
生前戒名は、菩提寺の住職にお願いして、お元気なうちに戒をお受けし、戒名を授けていただく仕組みです。
多くの菩提寺で、年に一回程度「受戒会(じゅかいえ)」と呼ばれる行事を開催しており、そこで在家信徒の方に戒を授ける機会が用意されています。
受戒会では、簡単な仏教のお話を聞いた後、三帰依(仏・法・僧に帰依しますという表明)を行い、十戒や十六条戒など、宗派ごとの戒律をお授けいただきます。
私の宗派・曹洞宗では「十六条戒(じゅうろくじょうかい)」をお授けします。
三帰依戒・三聚浄戒(さんじゅじょうかい)・十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)の三つを合わせた戒で、「いのちを奪わない」「うそをつかない」「貪らない」など、よりよく生きていくための16の指針です。
これに続いて、住職から戒名を頂戴します。
「自分で戒名を考える」のではなく、「住職に授けていただく」というのが大切なポイントです。
戒名は仏弟子としての証ですから、住職から正式に授けていただいてこそ意味があります。
生前戒名であっても、住職と相談しながら、住職に決めていただく形をお勧めします。
ご自身の希望(「父の戒名と『法』の字をそろえてほしい」「書道が好きなので翰の字を入れてほしい」など)を住職にお伝えして、それを住職が反映してくださる、というやり取りはむしろ歓迎です。
住職にとっても、ご本人の意思を直接伺いながらお戒名を考えられるのは、とても丁寧な仕事になります。
費用が抑えられる理由
生前戒名の大きなメリットの一つが、お布施を抑えられることです。
葬儀の場で授ける戒名のお布施は、葬儀全体の慌ただしさのなかで「どの位号にしましょうか」「お布施はいくらお包みすれば」とご家族が判断することになります。
住職への気兼ねや、ご親戚への対面から、つい高めの位号や、相場の上限近いお布施をお包みしてしまうご家族も少なくありません。
生前戒名であれば、ご本人がお元気なうちに住職とじっくりお話しした上で位号もお布施も決められます。
「うちは信士で十分です」「お布施は◯万円までで」と、ご自身の経済状況やご家族への配慮を反映してお決めいただけます。
また、生前戒名そのもののお布施は、葬儀時の戒名のお布施と同等または少し控えめに設定されることが多くあります。
これは、生前戒名を授けることでご家族の葬儀時の負担が減ることを、お寺側も理解しているためです。
具体的には、信士・信女位の生前戒名で5〜20万円、居士・大姉位で20〜50万円程度の目安が一般的なようです(お寺により幅があります)。
家族の負担が減る
生前戒名のもう一つの大きなメリットは、ご家族の葬儀時の負担を大きく減らすことです。
ご家族が葬儀の際に直面する大きな悩みの一つは、「故人がどんな戒名を望んでいたかわからない」ことです。
生前にお話する機会がなかったために、ご家族が住職と相談しながら手探りで決めることになります。
「お父さんはどんな戒名を望んでいたかしら…」と悩みながら、葬儀の慌ただしさのなかで決めるのは、ご家族にとって大きな精神的負担です。
生前戒名であれば、ご本人がお元気なうちにすでに戒名をお受けいただいているため、葬儀の際にはその戒名をそのままお位牌に刻めばよく、ご家族の負担が大きく減ります。
お布施についても、生前にすでにお寺とお話できていますから、葬儀時に新たに戒名のお布施をお包みする必要はありません(葬儀全体のお布施は別途お包みします)。
父は70歳の誕生日に「自分の戒名を生前に受けたい」と言って、菩提寺で受戒会に参加しました。そのとき父が住職と一緒に決めた戒名は『慈光院 法翁 永誠 居士』でした。書道が好きだった父にちなんで『翁』の字を入れていただいたんです。父は「これで安心して残りの人生を楽しめる」とよく笑っていました。父が亡くなったとき、葬儀の慌ただしさのなかで戒名で迷うことなく済んだのは、本当にありがたかったです。父の最後の優しさだったと、今でも思います。
このご家族のように、生前戒名は「ご家族への最後の優しさ」として受け取られることがあります。
残されるご家族の負担を案じてのご決断、というお気持ちに、住職も心を打たれます。
受け方の流れ4ステップ
生前戒名をお受けになるときの、おおまかな流れをご紹介します。
-
ステップ1: 菩提寺に相談: まずは菩提寺の住職に「生前戒名をお受けしたい」とお伝えします。受戒会が年に何度開催されているか、参加の流れを教えていただきます。菩提寺をお持ちでない方は、お住まいの地域のお寺で生前戒名を受け付けているところを探されるか、お近くのご縁のある方にご紹介いただくのもよいでしょう。
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ステップ2: 希望を住職に伝える: 「俗名の◯の字を取ってほしい」「父の戒名の字を引き継ぎたい」「書道が好きなので関係する字を入れてほしい」など、ご希望があれば住職に率直にお伝えください。住職もそれを反映してお戒名を考えてくださいます。
-
ステップ3: 受戒会に参加: 菩提寺の受戒会に参加し、簡単な仏教のお話を聞き、三帰依の表明と戒律をお受けします。お時間は1日〜2日程度です。受戒会の詳しい流れは菩提寺さまにご確認ください。
-
ステップ4: 戒名を頂戴・ご家族に伝える: 受戒会の最後に、住職から戒名を授けていただきます。お受けした戒名は、ご家族にもしっかりお伝えしておくことが大切です。エンディングノートに記載する、お仏壇の引き出しに戒名を書いた紙を保管するなど、葬儀の際にご家族が確認できる方法を整えておきましょう。
ご家族との終活のお話のなかに、生前戒名を組み込まれる方が増えています。
エンディングノートと一緒にご検討されると整理がつきます。
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よくある質問(FAQ)
戒名についてよくいただくご質問をまとめました。
気になる項目から開いてご覧ください。
よくあるご質問
Q 戒名料はいくらが相場ですか?
位号により大きく違います。 信士・信女で10〜30万円、居士・大姉で30〜80万円、院号で80万円以上が一つの目安です。 ただし「戒名料」という呼び方は本来適切でなく、お寺へのお布施としてお包みするものです。 地域や菩提寺との関係でも幅がありますので、菩提寺の住職に「うちの分相応でお願いしたい。 お布施はいくらほどでしょうか」と率直にお尋ねされるのが、もっとも確実で安心できる方法です。
Q 女性の戒名はどう違いますか(大姉とは)?
女性の位号は信女(しんにょ)、大姉(だいし)、院号大姉、院殿大姉の4段階です。 「大姉」は男性の「居士」に対応し、信仰心が篤くお寺や地域に貢献された女性の方への称号です。 お母さまにふさわしい位号は、生き方そのものを伺ったうえで住職が判断します。 婦人会や家庭での仏壇供養を長くお勤めいただいた方には大姉位がお授けされることが多くあります。
Q 子どもや赤ちゃんに戒名は必要ですか?
必要です。 お子さまには年齢に応じて嬰子(〜2歳)・孩子(2〜5歳)・童子(6〜15歳)といった専用の位号があります。 お子さまを亡くされたご家族の精神的負担を考え、お布施は大人より控えめに設定されることが多くあります。 「短い生涯だったから戒名はいらない」というお気持ちにはなさらず、ぜひ仏弟子としてお迎えして差し上げてください。 短い生涯にも、必ずその方らしい一字を住職が選ばせていただきます。
Q 戒名を自分でつけてもよいですか?
法律上は禁じられていませんが、住職としてはおすすめいたしません。 戒名は「戒を受けた証」として住職から授けていただくところに本来の意味があります。 自作の戒名は「故人を偲ぶお名前」としては成立しますが、「仏弟子としての名」とは厳密には言えません。 経済的事情でお布施を抑えたいご事情があれば、生前戒名や、お布施を抑えめに対応してくださるお寺もありますので、まずは菩提寺やお近くのお寺にご相談されることをおすすめします。
Q 宗派が違うお寺に戒名を頼めますか?
基本的にはおすすめしません。 戒名はそれぞれの宗派の伝統に基づいて授けるものですので、ご家族の宗派と異なるお寺で授かると、菩提寺やご親戚との関係で齟齬が生じることがあります。 ご家族の宗派にあったお寺を見つけることをおすすめしますが、どうしても見つからない場合は、葬儀社の僧侶派遣やお坊さん派遣サービスで宗派を指定して手配することもできます。 なお浄土真宗は「法名」、日蓮宗は「法号」と呼び方も構造も違うため、宗派を超えた依頼はとくに注意が必要です。
Q 無宗教葬でも戒名は必要ですか?
無宗教葬では戒名は授けないのが一般的です。 仏教徒として仏弟子になることを願わないご家族には、戒名は必要ありません。 ただし、無宗教葬で送られた後にお墓を仏教の寺院墓地に建てる場合や、ご家族が後から「やっぱり仏弟子として送りたかった」と思われた場合は、後から戒名をお受けいただくこともできます。 お墓の種類や供養の方法とあわせて、ご家族でよくお話し合いされるのがよろしいでしょう。
Q 生前戒名はどう受けますか?
4つのステップで進みます。 ①菩提寺の住職に相談(受戒会の有無確認)、②自分の希望(俗名の字・趣味・人柄)を住職に伝える、③受戒会に参加して戒を受ける、④戒名を頂戴しご家族に伝える、という流れです。 菩提寺をお持ちでない方は、お住まいの地域のお寺で生前戒名を受け付けているところを探されるか、ご縁のある方にご紹介いただくこともできます。 エンディングノートに記載してご家族と共有しておくと、葬儀時の混乱を防げます。
Q 院号はどんな人が授かりますか?
主にお寺の建立や大規模な修繕にご寄進いただいた方、長年にわたって檀信徒総代や役員をお勤めいただいた方、仏教の教化・布教に大きく貢献された方、学術・芸術・社会奉仕で大きな功績を残された方などが、院号を授かります。 お布施は80万円以上が一般的で、ご寄進の意味合いを兼ねます。 なお院号は決して必須ではなく、信士・信女のお戒名で、長くご家族の手で大切にご供養いただくほうが、よほど大切なお勤めです。 世間体や対面で院号を望まれるのは本来の意味から外れます。
Q 戒名は後から変更できますか?
原則として、一度授けた戒名は変更しません。 戒名は仏弟子としていただくお名前ですので、お授けした後で「やっぱり別のお名前に」というのは、住職としても本来お受けしにくいご相談です。 ただし、明らかな誤字や、ご家族の知らないところでお寺が独断で授けた場合(菩提寺以外で授けられた等)は、菩提寺の住職にご相談いただければ対応の余地があります。 位号を信士から居士に変更したい等のご要望は、原則として認められません。 生前戒名で事前にじっくりお決めいただくことの大切さは、こうした変更不可の原則からも来ています。
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