一日葬とは|費用相場・一日の流れ・家族葬との違いをお坊さんがわかりやすく解説
「葬儀社の方から、一日葬というのを勧められた。家族葬と何が違うんでしょうか」——いま親御さんのお見送りを考えていらっしゃる方から、こうしたご相談が、この数年で本当に増えました。
一日葬(いちにちそう)は、通夜を省き、告別式と火葬を一日で行うお葬式の形式です。費用は45〜85万円ほどが目安。家族葬よりも15〜30万円ほど抑えられ、参列者の負担も軽くなることから、選ばれるご家庭が増えています。
ただ私のもとには、一日葬を終えられたあとに「もう少しゆっくりお別れしたかった」「親戚から、通夜もしないなんてと言われた」というご相談も届きます。通夜を省くことの意味を理解せずに選んでしまうと、後で立ち止まることになるのです。
この記事は、曹洞宗住職として葬儀と納骨の現場を見てきた目線から、一日葬とは何か、家族葬・直葬とどう違うのか、そして菩提寺がある場合にどこへ気をつければよいかを整理したものです。
※ この記事は最後まで読まなくてかまいません。気になる章だけお読みください。
一日葬とは — 通夜を省き告別式と火葬を一日で行うお葬式
50代の子世代
一日葬って、具体的には何をしないお葬式なんでしょうか?
お坊さん
通夜を省いて、告別式と火葬を一日で行う形式です。
一日葬とは、通夜を省き、告別式と火葬を一日で行うお葬式の形式です。読み方は「いちにちそう」。葬儀社によっては「ワンデイセレモニー」「ワンデイ葬」「一日プラン」と呼ぶこともありますが、内容はどれも同じものとお考えください。
一般的なお葬式は、ご逝去のあとに通夜(前夜のお参り)があり、翌日に告別式があって、そのまま火葬へ進みます。一日葬はこのうち通夜の部分だけを省くかたちです。告別式と火葬は通常どおり行われますので、お別れの儀式そのものを省くわけではありません。
一日葬・ワンデイセレモニーは同じもの
葬儀社のホームページを見ていると、「一日葬」「ワンデイセレモニー」「一日プラン」と、いろいろな呼び方があって戸惑われるかもしれません。
これらは言い方が違うだけで、中身はほぼ同じです。やわらかい印象にしたい葬儀社が「ワンデイセレモニー」という言い方を使うことが多くなっています。
呼び方に惑わされず、見るべきは「通夜を行うかどうか」「告別式を行うかどうか」の2点です。通夜なし・告別式あり・火葬ありなら一日葬。通夜も告別式もなく、火葬だけなら、それは別の形式である「直葬(火葬式)」になります。
家族葬・直葬との位置づけ
お葬式の形式を、儀式の量で並べると次のようになります。
一日葬は、直葬と家族葬のちょうど中間にあたる形式です。直葬のように儀式をまるごと省くわけではなく、家族葬のように通夜まで行うわけでもない。お別れの式は持ちたいけれど、ご家族の負担はできるだけ軽くしたい——その願いに応えるかたちで広がってきました。
一日葬が広がってきた背景
一日葬は、ここ十年ほどで急速に選ばれるようになりました。背景には、いくつかの事情が重なっています。
- 参列者の高齢化:故人の友人・知人がご高齢で、二日続けての参列が難しい
- 遠方からの参列者の負担:宿泊を伴う通夜参列がお年寄りには重荷
- 共働き・少子化:通夜・告別式の二日間を仕事を休んで動くのが難しい
- 感染症をきっかけにした簡素化:大勢で集まることを控える流れが定着した
- 故人本人の意思:「家族の負担を増やしたくない」と生前に望まれていた
葬儀情報を扱う鎌倉新書の「お葬式に関する全国調査」でも、一日葬を選ぶご家庭は2024年の調査で約1割となっており、近年は1割前後で推移しています。地域差は大きく、都市部や葬儀社の積極的なご提案がある地域では、さらに高い割合になっているという調査もあります。
40代の長男
通夜を省くというのは、宗教的にはどうなんでしょう?
お坊さん
そこは後で詳しくお話しします。意味を知って選ぶのが大事です。
通夜を省くことの宗教的な意味については、後の章で住職目線からお話しします。形式の選択そのものに正解・不正解はありません。ただ、通夜が本来どんな時間だったかを知った上で選ぶことを、ぜひお願いしたいのです。
家族葬・直葬との違い — 通夜の有無と読経の有無
50代の子世代
家族葬と一日葬は、どこがいちばん違うんですか?
お坊さん
通夜をするかどうか、ここがいちばんの分かれ目です。
「家族葬」「一日葬」「直葬」——名前は似ていますが、それぞれ違いがあります。違いを一言で表すなら、「通夜・告別式・読経」のどこまで行うかです。並べて見ると、見分けがつきやすくなります。
4つの葬儀形式の違い
それぞれの形式を、もう少しくわしく見ていきます。
- 一般葬:親族に加え、友人・知人・職場・近所の方まで広く参列していただく。通夜と告別式の2日間。費用は150〜250万円が目安
- 家族葬:家族と親しい親族を中心に、10〜30人ほどで送る。通夜と告別式は行う。費用は80〜150万円が目安
- 一日葬:通夜を省き、告別式と火葬を1日で行う。参列者は家族・親族中心。費用は45〜85万円が目安
- 直葬(火葬式):通夜も告別式も行わず、火葬だけ。立ち会うのは数人。費用は20〜50万円が目安
こうして並べると、一日葬は「通夜だけを省き、告別式は行う」という、家族葬と直葬の中間にあたる形式だとわかります。家族葬と混同されがちですが、家族葬は通夜・告別式の二日間が基本ですので、一日葬とは日数が違います。
どこを比べればよいか
葬儀社に見積もりをお願いするときは、プラン名に惑わされず、次の2点を見てください。
- 通夜を行うかどうか:これが一日葬と家族葬の分かれ目です
- 告別式を行うかどうか:これが一日葬と直葬の分かれ目です
葬儀社によって、同じ「一日葬」でも含まれる内容は異なります。たとえば、納棺を儀礼として行うか、お坊さんを呼んで読経を行うか、会食を設けるかなど、選び方によって費用も雰囲気も変わります。
「通夜なし・告別式あり」という骨格だけを共通点と考えて、あとの細部はご家庭の希望に合わせて決めていきます。
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一日葬の費用相場 — 全国平均と内訳
40代の長男
一日葬の費用は、家族葬よりどれくらい安くなりますか?
お坊さん
おおむね15〜30万円ほどです。通夜のぶん下がります。
一日葬の費用は、葬儀社の一日葬プランで45〜85万円が一般的な目安です。家族葬の80〜150万円と比べると、15〜30万円ほど抑えられます。
直葬の20〜50万円と比べると、20〜30万円ほど高くなります。費用を抑えたい気持ちと、お別れの式は持ちたい気持ち——その両方に応える金額帯になっています。
一日葬の費用に含まれるもの
葬儀社の「一日葬プラン」に通常含まれているのは、次のような項目です。
- 祭壇・棺・骨壷:告別式を行うため、家族葬と同じ規模の祭壇を組むことが多い
- ご遺体の搬送と安置:病院や施設から安置先まで、安置先から式場まで
- 式場の使用料:告別式を行う一日ぶんの会場使用料
- スタッフの人件費・進行:受付・進行・火葬場への同行
- 会葬礼状・返礼品:参列者の人数ぶん
通夜を行わないため、通夜会場の使用料・通夜の飲食(通夜振る舞い)・宿泊費が含まれません。この部分が、家族葬との費用差(およそ15〜30万円)の正体です。
家族葬・直葬と比べてどれくらい違うか
3つの形式を並べると、費用差がはっきりします。
- 直葬との差:直葬は告別式も式場もない。一日葬は告別式と式場のぶん高くなる
- 家族葬との差:家族葬は通夜会場・通夜振る舞いがある。一日葬はそのぶん安くなる
追加でかかりやすい費用
一日葬プランの基本料金のほかに、後から追加されやすい費用があります。見積もりの段階で確認しておくと安心です。
- 安置日数の延長:火葬場の予約が取れず日数が延びたぶんの安置料・ドライアイス代
- 病院から安置先までの搬送が遠い場合の追加料金
- お布施:これは葬儀社ではなくお寺にお渡しするもので、プランには含まれないことが多い
- 会食(精進落とし):火葬後の親族での食事を組み込む場合は別途
- 死亡診断書の文書料:病院に支払うもので、数千円〜1万円程度
「プラン料金がすべて」と思っていると、後で慌てます。見積もりを受け取ったら、「これ以外にかかるものはありますか」と一言確認してください。
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一日の流れ — 朝から夕方までの時刻別予定
50代の子世代
一日葬の当日って、朝から夕方までどう動くんでしょう?
お坊さん
午前に納棺と告別式、正午ごろ出棺、午後に火葬の流れです。
一日葬は、通夜を行わないぶん、ご家族の動きが当日の一日に集中します。朝から夕方までの動きを時刻ごとに見ていきます。火葬場の予約状況によって時間帯は前後しますが、おおむね次のような流れになります。
当日朝の動き
朝の動きから順を追います。
- 9:00頃 式場集合・受付準備:喪主とご家族は式場に早めに到着し、受付の準備・席順の確認・お坊さんへのご挨拶を済ませます
- 10:00頃 納棺:故人を棺にお納めします。家族の手で行う場合と、納棺の専門の方にお願いする場合があります
- 11:00頃 告別式:お坊さんによる読経、ご家族・参列者の焼香、弔辞・弔電の紹介。所要時間は40分〜1時間が一般的です
通夜を行わないため、前日からの動きはありません。ただし、納棺やお別れの時間が短いぶん、「もう少し故人と過ごす時間が欲しかった」と感じる方がいらっしゃるのも事実です。式場に少し早めに到着して、家族だけで対面の時間を持つことを、葬儀社にお願いしておくと安心です。
出棺から火葬まで
告別式が終わると、火葬場へ移動します。
- 12:00頃 出棺:霊柩車で火葬場へ向かいます。ご家族はマイクロバスや自家用車で続きます
- 12:30頃 火葬場到着・炉前読経:火葬炉の前で、最後のお別れと、お坊さんによる読経(炉前読経)。10〜15分ほど
- 13:00〜15:00 火葬:火葬は1〜2時間。そのあいだ、ご家族は控室で待機します
- 15:00頃 収骨(骨上げ):火葬が終わると、ご遺骨を骨壷にお納めします
ここまでが、火葬場での流れです。家族葬や一般葬と同じ動きですが、通夜を経ていないぶん、「一日のなかで一気に進む」という感覚をお持ちになる方が多いです。
収骨と還骨法要
収骨を終えた後、式場や自宅に戻り、還骨法要(かんこつほうよう)を営むご家庭があります。これは、ご遺骨を迎え入れて、改めて読経をいただく短い法要です。あわせて、初七日法要をこの日にまとめて営むご家庭も増えています(繰り上げ初七日)。
その後、参列いただいた親族と食事の席を持つことが一般的です(精進落とし)。一日葬では、この時点で夕方の16〜17時頃になり、皆さんを送り出して一日が終わります。
一日葬が選ばれる理由 — 高齢化・遠方親族・費用負担
40代の長男
うちの周りでも、一日葬が増えてきたように感じます。
お坊さん
背景には、5つの大きな事情が重なっているんです。
一日葬を選ばれるご家庭が増えているのには、はっきりとした理由があります。私が現場で見てきたなかでは、5つの事情がほぼ共通します。順にお話しします。
参列者の高齢化
故人が高齢でお亡くなりになると、ご友人・知人もご高齢のことが多くなります。二日続けての参列はお年寄りには重荷で、通夜と告別式の両方にお越しいただくのが現実的でない場面が増えています。
一日葬であれば、参列いただく方の負担は告別式の半日だけで済みます。ご高齢の参列者を多くお招きする場合、通夜の有無は本当に大きな違いになります。
厚生労働省の人口動態統計を見ても、日本では80代・90代でお亡くなりになる方が大半を占めています。参列者も同世代になりがちで、二日間にわたる参列は身体的に難しい。これが一日葬を後押ししている最大の要因です。
遠方親族の負担
少子化と都市部への人口集中が進み、ご親族が遠方に住んでおられるご家庭が当たり前になりました。新幹線や飛行機で来ていただく場合、通夜と告別式の両方に出席するためには、宿泊と移動で2泊3日の動きになります。
一日葬であれば、朝に出て夕方に帰れる日程で参列できます。仕事のある現役世代にも、ご高齢の親族にも、無理のない選択肢です。
費用と時間の負担を抑えたい
一日葬は、家族葬よりも15〜30万円ほど費用を抑えられます。これは年金生活のご家庭にとって小さくない差です。さらに、ご家族が動く日数も一日に集中するため、仕事を休む日数・親族を呼ぶ日数を半分にできます。
「費用を抑えたいけれど、直葬ほど簡素にはしたくない」というご家庭にとって、一日葬は現実的な中間の選択肢になっています。
感染症をきっかけにした簡素化
数年前の感染症の流行をきっかけに、大勢で集まることを控える流れが定着しました。通夜のように、夜にご親族・ご近所が集まって振る舞いの席を囲む形式は、自然と縮小されました。
感染症の状況が落ち着いてからも、「もう以前のような大きな通夜には戻れない」という空気が残り、その流れの中で一日葬が選ばれやすくなりました。
故人本人の意思
近年、エンディングノートや終活のなかで、葬儀の希望を書き残される方が増えました。「家族の負担を増やしたくない」「大げさなことはしないでほしい」と書かれている方も少なくありません。
故人ご本人の希望が「簡素に」「家族だけで」というものなら、一日葬はその意思に沿った選択になります。「故人がそう望んだ」という根拠があると、ご家族の中で迷いも少なくなります。
一日葬の欠点と注意点 — 親族・菩提寺との行き違いの正体
50代の子世代
一日葬で後悔した、という話も聞きます。本当ですか?
お坊さん
あります。ただ、原因はだいたい3つに絞られるんです。
一日葬を終えられたあと、「これでよかったのだろうか」と立ち止まられるご家族は、確かにいらっしゃいます。けれど、後悔にははっきりとした原因のパターンがあり、それを知っておけば防げるものがほとんどです。
故人とのお別れの時間が短くなる
通夜を省くと、故人と過ごす時間が当日の朝から火葬までに集約されます。ご家族のなかには、「もう一晩、ゆっくり寄り添いたかった」という気持ちが残る方がいらっしゃいます。
通夜は本来、故人を一晩中見守る「夜伽(よとぎ)」の時間でした。家族が集まり、ろうそくと線香の火を絶やさず、故人と過ごす最後の夜を持つ——これが通夜の原型です。一日葬ではこの時間がなくなるため、お別れの実感が薄いと感じる方がおられます。
この点は、後ほど「通夜を省くことの宗教的な意味」の章で詳しくお話しします。
親族が納得しないことがある
喪主だけで一日葬を決めてしまうと、ご親族——特に故人のご兄弟やご親類のなかで——「通夜もしないなんて」と感じる方がいらっしゃることがあります。
世代によって、葬儀に対する感覚は違います。70代・80代の方には、「通夜は当然のもの」という意識が根強く残っています。それを抜きにして、効率や費用だけで一日葬を選ぶと、後で親族との関係に小さな影が残ることがあります。
避ける方法は、ひとつだけです。決める前に、ご親族に一言相談すること。お別れをしたいご親族がおられるなら、その方の気持ちを確認してから決める。これだけで、ほとんどの行き違いは防げます。
菩提寺との行き違い
ご先祖代々のお寺(菩提寺)がある場合、一日葬を選ぶ前に必ずお寺へ連絡を入れてください。これを飛ばしてしまうと、後で本当に困ることになります。
連絡なしで一日葬を進めてしまうと、こういうことが起こります。
- 戒名の授与を断られる:通夜・枕経を含めた一連のお勤めを前提にしているお寺は多くあります
- 納骨を断られる:菩提寺のお墓に納める手続きが進められない
- 檀家としての関係が悪くなる:今後の法事やお墓の管理にも影響します
これは、後の「菩提寺との相談」の章で、解決法までていねいにお話しします。
通夜を省くことの宗教的な意味 — 夜伽(よとぎ)が持っていた役割
40代の長男
通夜を省くことに、宗教的にはどんな意味があるんでしょう?
お坊さん
省くか省かないかの前に、本来の意味を知っていただきたいんです。
この章は、住職としてどうしてもお伝えしておきたいところです。一日葬を選ぶこと自体を否定するつもりはありません。けれど、通夜が本来どんな時間だったかを知った上で選ぶのと、知らずに選ぶのとでは、選ばれた後のご家族の気持ちがまったく違うのです。
通夜は本来「夜通し故人に寄り添う時間」
通夜の「通夜」は、文字通り「夜を通す」と書きます。本来の意味は、故人が亡くなった夜に、家族や親族が一晩中故人のそばで過ごし、ろうそくと線香の火を絶やさず、故人の魂を見守る——というものでした。これを古い言葉で「夜伽(よとぎ)」と呼びます。
夜伽には、いくつかの意味が重ねられていました。
- 故人と過ごす最後の夜:もう触れることのできなくなる故人の体に寄り添う時間
- ろうそくと線香の火を絶やさない:邪気を遠ざけ、故人の魂を守るとされた
- 家族・親族・近所の人が集まる:個人ではなく地域で故人を送り出す
- 悲しみを分かち合う:夜を共に過ごすことで、ご家族の悲しみがほどけていく
通夜は、お別れの儀式の一部であると同時に、遺された家族が悲しみを少しずつ受け入れていくための時間でもありました。亡くなったその夜のうちに葬儀へ移れないのは、火葬まで時間がかかる現実だけが理由ではなく、ご家族が立ち止まる時間を持つためでもあったのです。
一日葬で代わりにできること
「だから通夜を省くのはダメだ」と申し上げたいわけではありません。現代の暮らしのなかで、夜通しの通夜を昔のままに営むのは現実的でない、というご事情はよくわかります。大切なのは、通夜が担っていた役割を、別の形で残せないかを考えていただくことです。
通夜の代わりに残せる時間は、いくつもあります。
- 枕経(まくらきょう):故人の枕元で短くお経をあげる儀式。30分〜1時間ほど。納棺の前後に営めます(曹洞宗では「臨終諷経(りんじゅうふぎん)」とも呼びます)
- 線香番:式場で、家族が交代で線香の火を絶やさない時間を持つ。一晩でなくとも、夕方の数時間だけでも構いません
- お別れの夕べ:告別式の前夜に、家族だけで故人と過ごす時間を作る。葬儀社にお願いすれば対応してくれます
- 後日のお別れ会:四十九日のころに、親族や友人を招いて改めてお別れの場を持つ
私としては、一日葬を選ばれるなら、枕経だけでもお願いされることをお勧めします。枕経は、通夜の元の形がそのまま短く残ったお勤めです。30分ほどの時間ですが、お経の声のなかでご家族が故人と向き合う時間は、後々まで支えになります。
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菩提寺との相談 — 事前連絡が最大の鉄則
50代の子世代
うちは先祖代々のお寺があります。一日葬でも大丈夫ですか?
お坊さん
決める前に、必ずお寺へ一本電話を入れてください。
ご先祖代々のお寺(菩提寺)がある場合、一日葬を選ぶなら、必ず事前にお寺へ相談してください。これは住職としてこの記事でもっとも強くお伝えしたいことです。
連絡をせずに進めるとどうなるか
事前相談なしで一日葬を進めてしまうと、こういうことが起こります。
- 戒名の授与を断られる:通夜を含めた一連のお勤めを前提にしているお寺もあります
- 納骨を断られる:「うちでお経をあげていないご遺骨は納められません」と言われる
- 改めて法要をお願いすることになる:結局、後から枕経や読経を依頼することになり、お布施が二重にかかる
- 檀家としての関係が悪くなる:今後の法事や、お墓の管理をめぐって気まずさが残る
「費用を抑えるための一日葬」だったはずが、後から法要を頼み直して、かえって費用も手間も増えてしまう——これはいちばん避けたい結末です。
40代の長男
お寺に一日葬と伝えたら、怒られそうで電話しづらいです。
お坊さん
事情を正直に話せば、たいていのお寺は相談に乗ります。
相談の切り出し方
「一日葬にしたい」と伝えるのは気が引ける、という方は多くおられます。けれど、事情を正直にお話しすれば、頭ごなしに断るお寺はそう多くありません。枕経と告別式を組み合わせる、後日あらためて四十九日法要を営むといった、現実的な落としどころを一緒に考えてくださるお寺が大半です。
電話でお伝えする内容は、次の3点だけで十分です。
- 名乗り:「◯◯家の長男(娘)の◯◯と申します」
- 逝去の報告:「父(母)が先日、逝去いたしました」
- 事情と相談:「ご親族の高齢や遠方の事情で、通夜を省いた一日葬を考えております。枕経や告別式のお勤めについて、ご相談させていただけますでしょうか」
大切なのは、「決めてしまってから事後報告する」のではなく「決める前に相談する」という順番です。この順番を守ることで、菩提寺をめぐる行き違いはかなり避けられます。
菩提寺がない場合は
先祖代々のお寺がなく、お墓も持っていないご家庭であれば、菩提寺をめぐる心配は基本的にありません。その場合は、葬儀社が紹介してくれる僧侶に告別式の読経をお願いするか、宗教的な式をまったく行わないか、ご家族のお考えで選んでいただけます。
納骨先も、公営墓地・納骨堂・樹木葬・永代供養墓など、菩提寺にしばられず幅広く選べます。
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住職が勧めるご家庭・勧めないご家庭
50代の子世代
うちの場合、一日葬を選んでいいものか迷っています。
お坊さん
向いているご家庭と、慎重に考えていただきたい家庭があります。
一日葬は、どのご家庭にも合う形式ではありません。住職として現場を見てきたなかで、勧めやすいご家庭と、慎重に考えていただきたいご家庭がはっきり分かれます。
一日葬を勧められるご家庭
次のような事情がそろっているご家庭には、一日葬は無理のない自然な選択になります。
- 参列者の中心が高齢のご友人・ご親族:二日続けての参列が難しい場合
- 遠方の親族が多い:通夜の参列のために前泊が必要になる場合
- 故人本人が簡素な見送りを望んでいた:エンディングノートや生前のお話に明記されている
- 菩提寺との事前相談ができている:通夜の代わりに枕経をお願いするなどの合意がある
- 共働き世帯で、二日間休めない事情がある:仕事や育児で動きが限られる
上記のうち3項目以上当てはまるご家庭であれば、一日葬を選ばれて後悔されることは少ない傾向があります。
一日葬を慎重に考えていただきたいご家庭
逆に、次のような事情があるご家庭は、一日葬よりも家族葬や一般葬を検討された方が、後で困ることが少ないように思います。
- 現役世代の方が急逝された:仕事関係・地域・友人の方から、後日個別に弔問に来られる対応が長く続きやすい
- 故人の交友関係が広く、参列したい方が多い:一日葬では「お別れができなかった」と感じる方が出やすい
- ご親族のなかに通夜を大切にされる方がいる:通夜なしの選択に納得していただけない可能性がある
- 菩提寺との事前相談ができていない:戒名・納骨の段で困りやすい
これらが2項目以上当てはまるご家庭は、家族葬以上の形式を選ばれた方が、後の対応が落ち着きます。
「形式の正解」はない
ここまで「勧める・勧めない」とお話ししてきましたが、ご家庭の事情はそれぞれ違います。「うちは家族葬にすべきか、一日葬にすべきか」という最終判断は、ご家族と、菩提寺と、葬儀社の三者で相談して決めていただくものです。
この記事に書いたことは、あくまで判断材料の一つ。読まれた上で「うちは家族葬がいい」「やはり一日葬で」と判断されるのは、どちらもご家族の選択として尊重されるものです。
親族へのお返しと参列の作法 — 一日葬ならではの心づかい
40代の長男
一日葬だと、香典や返礼品の扱いはどう変わるんですか?
お坊さん
通夜がないぶん、ご案内の仕方に少し心づかいが必要です。
一日葬は、通夜を省くぶん、参列者の動き方が一般葬とは少し違います。香典・返礼品・服装・挨拶——それぞれに、一日葬ならではの心づかいが必要になります。
香典の扱い
一日葬であっても、参列者から香典を頂戴することは一般的です。家族葬と同じく、辞退するか受け取るかをご家族で決めて、参列者への案内で明確にお伝えします。
- 受け取る場合:3千〜1万円程度が一般的な目安。当日返しの返礼品を3千〜5千円程度で用意し、後日に香典返しは行わないか、四十九日明けに改めてお送りするかをお決めください
- 辞退する場合:参列者へのご案内に「お香典・お供物・ご供花は固くご辞退申し上げます」と明記。当日も受付で改めてお伝えします
通夜を行わない一日葬では、通夜の受付・告別式の受付という二度のやりとりがなくなり、香典の流れも当日一回で完結します。ご家族の負担はそのぶん軽くなりますが、案内が行き届いていないと当日に混乱しやすい点は注意が必要です。
参列者への案内
参列者にお送りする訃報・式次第のご案内には、「通夜は行わず、告別式のみとさせていただきます」と必ず明記してください。これがないと、ご年配の参列者を中心に「通夜はいつですか」と問い合わせが入り、当日までご家族が対応に追われます。
ご案内文に必ず入れていただきたいのは、次の項目です。
- 故人のお名前と続柄
- 通夜を行わず、告別式のみであること
- 告別式の日時(開式時刻)
- 会場の名称と住所
- 喪主のお名前と連絡先
- お香典・お供物の扱い(受ける/辞退する)
電話やメールでご連絡される場合も、この6点を口頭でお伝えします。特に「通夜を行わない」ことだけは、必ず最初の一言として伝えてください。
当日の服装と挨拶
一日葬の参列者の服装は、家族葬・一般葬と変わりません。男性は黒のスーツ、女性は黒の喪服が基本です。
喪主の挨拶も、家族葬・一般葬と同じ流れで構いません。違うのは、「通夜を省かせていただいたこと」へのお詫び・お礼を一言添えることです。
「故人の意思と、ご親族のご事情により、通夜を省いた一日葬とさせていただきました。短い時間ではございますが、最後までお見送りいただけますと幸いです」——このような一言があるだけで、参列者の受け取り方は大きく変わります。
通夜を省くという選択を、ご家族の責任で胸を張って伝える。これが一日葬ならではの心づかいです。
よくある質問
よくあるご質問
Q 一日葬は何時間で終わりますか?
式場での告別式が40分〜1時間、火葬と収骨を含めて、朝から夕方までの6〜8時間が目安です。 火葬場の予約時間によって前後しますが、9〜10時に式場集合、11時告別式、12時出棺、13〜15時火葬、15時収骨、16時還骨法要・精進落としという流れが一般的です。
Q 一日葬の費用は本当に安くなりますか?
家族葬と比べて、通夜会場の使用料・通夜振る舞いの飲食代・宿泊費がないぶん、15〜30万円ほど抑えられます。 葬儀社の一日葬プランで45〜85万円が一般的な目安です。 鎌倉新書の全国調査では一日葬の平均は約87万円となっており、葬儀社プランの目安より少し上に出る傾向があります。 告別式や火葬の規模を家族葬と同等に揃えると、差が縮まることもあります。 見積もりで「通夜分の項目がいくら下がっているか」を確認してください。
Q 一日葬は菩提寺に断られることはありますか?
あります。 先祖代々のお寺がある場合は、決める前に必ず連絡を入れてください。 通夜を含めた一連のお勤めを前提にしているお寺では、通夜なしの一日葬を受けられないことがあります。 事前相談で「枕経をお願いする」「告別式の読経をお願いする」など、ご相談すれば多くの場合は調整できます。
Q 戒名はもらえますか?
一日葬であっても、戒名は通常どおり授かれます。 菩提寺がある場合は菩提寺のご住職に、ない場合は葬儀社が紹介する僧侶にお願いします。 戒名の位(くらい)によってお布施の額が変わります。 費用面の事情を正直にお話しいただければ、ほとんどのお寺はご相談に応じてくれます。
Q 香典は受け取っていいですか?
受け取って構いません。 家族葬・一般葬と同じく、辞退するか受け取るかをご家族で決め、参列者への案内に明記してください。 受け取る場合は3千〜1万円程度が一般的な目安です。 当日返しの返礼品を用意するか、四十九日明けに香典返しをお送りするか、葬儀社と相談して決められます。
Q 参列者には何と案内すればよいですか?
訃報のご案内に「通夜は行わず、告別式のみで執り行います」と必ず明記します。 電話やメールで個別にお伝えする場合も、最初の一言として「通夜は行わない」ことをお伝えしてください。 これが抜けると、ご年配の参列者が通夜にお越しになって対応に追われる事例があります。
Q 一日葬と家族葬を組み合わせられますか?
組み合わせられます。 「家族・親族中心の少人数で、通夜を省いて告別式のみ行う」のは、いわば「家族葬でかつ一日葬」の形になります。 参列者の範囲(家族葬の特徴)と、儀式の日数(一日葬の特徴)は別の軸ですので、葬儀社にこの2点を分けて伝えると、希望に合った見積もりが得られます。
Q 火葬場が午後しか取れない場合は?
対応できます。 朝に式場集合・納棺・告別式を行い、午後に出棺・火葬という流れに調整できます。 逆に午前火葬の場合は、朝早めの告別式となり、参列者の到着時刻にも気を配る必要があります。 火葬場の予約状況は葬儀社が押さえるため、まず予約可能な時間帯を確認してから、当日の流れを組み立てます。
Q 通夜を省くと故人に申し訳ない気がします
そう感じられるご家族は多くいらっしゃいます。 完全に通夜の代わりにはなりませんが、枕経(故人の枕元での短いお経)や、式の前夜に家族だけで集まる「お別れの夕べ」、火葬当日の式場での線香番など、通夜の役割を部分的に残す方法がいくつもあります。 お坊さんに相談すれば、ご家庭に合う形を一緒に考えてくださいます。
Q 後日お別れの会は必要ですか?
一日葬で参列できなかった親族・友人がおられる場合、後日のお別れ会はとても有効です。 時期は四十九日のころが一般的で、自宅・菩提寺・レンタル会場などで、故人の写真を飾って思い出を語り合う形が多いです。 お招きする範囲や形式に決まりはなく、ご家族の負担に合わせて自由に設計できます。
Q お布施の相場は家族葬と比べてどうですか?
通夜の読経が省かれるぶん、お布施は家族葬より5〜15万円ほど抑えられる傾向があります。 家族葬で15〜50万円が目安なのに対し、一日葬は10〜35万円ほどです。 地域・宗派・お寺との関係で幅があり、戒名の位によっても変わります。 菩提寺のご住職に「皆さん、どのくらいでされていますか」と率直にお尋ねになって構いません。 曹洞宗では枕経のことを「臨終諷経(りんじゅうふぎん)」とも呼び、舎利礼文(しゃりらいもん)などをお唱えします。
主な参考資料・出典
本記事の費用相場・統計・法律に関する数値は、次の公的資料・全国調査を参考にしています。複数の情報を突き合わせて作成しましたが、金額や割合はいずれも全国的な目安であり、地域・葬儀社・寺院・宗派によって幅があります。
- 株式会社鎌倉新書「第6回 お葬式に関する全国調査(2024年)」 — https://www.e-sogi.com/guide/
- 厚生労働省「人口動態統計」 — https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
- 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」関連通知 — https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei15/
- 一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会 — https://www.zengokyo.or.jp/
- 一般財団法人 日本消費者協会「葬儀についてのアンケート調査」 — https://jca-home.jp/
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